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北アルプスの山小屋で働く話48(放浪記489)

 

飲みっぷり

 

山小屋で何年も働く山男や山女たちの飲みっぷりは半端なものじゃない。

 

空気の薄い山頂ではお酒が回りやすい。

そんなところで毎晩晩酌をしている人たちにとっては、空気の濃い低地ではお酒は水みたいなものだった。

 

屈強で体力に溢れ、気合いに満ちた山人たちが最後の宴会をしているのである。

なかなかに激しいものがあった。

 

さすがにこの最後の宴会で怒り出すような人はいなかったが、色々な思いに感極まって泣き喚く人や爆笑が止まらない人たちがあちこちにいる。

 

 

泥酔

 

お酌をしながら色々な人と飲み交わしていると、段々と酔いが回ってきた。

 

最初のうちは社交的に飲み交わしているのだが、この時の心情の根っこにはIちゃんとの関係の苦しい思いが渦巻いている。

終いにはヤケ酒のようになってきて、激しく飲み続けた。

飲まないとやってられないと言った心情だ。

 

仕事が無事に終わり、手元にたくさんのお金をもらって、ホクホク顔の人たちとは打って変わって、僕一人が落ち込んでヤケ酒に飲まれていた。

 

流石にあまりにもそれぞれのプライバシーに関わることなので、Iちゃんとのことは具体的には誰にも言わなかったが、何も言わずとも皆がなんとなく理解してくれていた。

何が辛いのかは分からなくとも、辛いと感じている感情に共感してくれる。

 

僕は、複雑な心境のまま酔い潰れて宴会場で寝てしまった。

 

幸いなことに酔い潰れているのは僕一人ではなく、ホテルの仕様も酔い潰れた客のために作られているので、大した問題にはならなかった。

 

 

宴会の続き

 

山男、山女たちの宴会は強烈で、次の日にも続く。

飲む合間に温泉に入り、豪勢な食事を食べて、再び飲み始める。

 

僕は、この日は控えめに飲んで大人しくしていた。

 

結局、Iちゃんとの関係は何もスッキリすることなく、不満を抱えたまま全てが終了した。

 

次の日の朝、僕はやるせない思いを抱えたまま大阪へ帰ることになった。

 

Iちゃんにも別れの挨拶をしたが、ギクシャクしたままに冷たい別れになってしまった。

 

 
 
 

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