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放浪記047

西成での文化人生活の話2(放浪記047)

価値観の転換

 
 
 
タイ旅行、特に南の島でのノンビリした時間を経験したことで、もう少しゆったりした暮らしをしたいと考えるようになる。
 
 
 
パンガン島で出会った旅人たちは肩の力を抜いて気楽に過ごしていた。
 
彼らみたいにノホホンと暮らしたい、パンクス的思想だった僕にヒッピー的思想が混じり込んできた。
 
 
 
ツタヤのバイトは色々なビデオやCDを借りられるので続けて行きたいが、仕事自体は忙しいのでバイトに入る日数を減らしたいと思っていた。
 
今までは週5とかで入っていたのを週2や週3にして残りの日々を楽なバイトに置き換えると言うのが理想的だ。
 
 
 
なにか楽で自由で気軽にできる仕事はないか?などと言う自分勝手で都合のいい話を探し求めて求人誌を見たり、兄に相談したりしていた。
 
 
 
探し続けてしばらくすると、奇跡的にも理想的なバイト先が現れて来た。
 
 
 
 
 
 

ビデオ屋

 
 
 
兄の元バンドメンバーが働いているレンタルビデオ屋でバイトを募集していると言う。
 
またビデオ屋かよ、と思うのだが、どうやらそう言う運命らしい。
 
 
 
このビデオ屋は偶然にも、僕が働いている西日本最大のツタヤから、わずか300メートル離れたところにある。
 
店舗の大きさは10畳ほどと小さく、非常にこじんまりとした昔からある下町のビデオ屋。
 
昔は繁盛していたらしいのだが、今は大きなツタヤが出来たことにより客足が遠のき、倒産寸前だった。
 
 
 
月々の収入は店舗維持料とアルバイトへの給与の支払いでほぼ無くなるらしい。
 
それでも沢山の異なる店舗を持つ社長がこの店を潰さずにいるのは、ひとえにバイトの人たちを食わせるためだと言う。
 
なんともありがたいバイト思いの社長。
 
 
 
このビデオ屋の名前はフォーラムと言い、会議室や公開討論場と言う意味があり、名前どおりにバイトたちが集い文化を形成するのに一役買っていた。
 
 
 
 
 
 

採用

 
 
 
兄の元バンドメンバーのGさんを通して、店長代理のバイトの人に話を通して、フォーラムのアルバイトの一員に加えてもらうことが出来た。
 
 
 
僕がツタヤでバイトしていることは、社長の気を悪くさせない為に秘密にしておく、と言うのが条件の一つだ。
 
そしてもちろん、僕がフォーラムでバイトしている事はツタヤの上司にはナイショの話。
 
 
 
そんなわけで、片や西日本最大のレンタルビデオ屋で働き、片やその店舗のせいで潰れそうなビデオ屋で働くと言う、訳の分からない二重スパイのような生活が始まった。
 
状況はスパイのような歪さがあるが、僕の生活にとっては理想的な状態を手に入れた。
 
 
 
 
 
 

フォーラムでのバイト

 
 
 
フォーラムでのバイトは想像を絶するほど楽で気楽だった。
 
 
 
ツタヤで一旦レジ打ちのシフトになると、忙しい時間帯などは数時間ぶっ続けで立ちながらレジを打ち、次のシフトの人が来るまでトイレにすら抜けられないと言うような過酷な忙しさだった。
 
その反面、フォーラムでは30分に一人客が来るかどうかと言うような暇さだった。
 
 
 
基本的にはただ椅子に座って好きな音楽を聴き、好きな本を読み、好きな映画を見て、たまにお客さんが来ると接客すると言う、まさしく僕の理想を体現したような仕事だ。
 
 
 
この店には店長が居らず、対等なバイト同士が共同で働いて居て、上司に対する気兼ねなどはない。
 
店長代理の人は、他の人が責任を持って店の面倒を見ないので、ボランティア的に店の面倒を見ている。
 
残りのバイトはその好意に甘えるだけ。
 
 
 
社長は月に一度ほど顔を見せるが、これと行って何かを言うわけでもなく、挨拶して終わり。
 
それでいて、バイトの自由や待遇は非常に良い。
 
 
 
時給こそ、ツタヤと比べると8割程度しかもらえないが、労働量は十分の一以下なので文句は一切ない。
 
歩いて1分のところにある弁当屋では、バイトに入った時には半額で弁当が購入できたりする。
 
自由度も素晴らしく、制服などはない、服装が世間の常識から少しくらい外れていても、全く問題にはならない。
 
 
 
お客さんも逆にこう言う良い加減なノリが好きな人が自然と集まって来る。
 
大店舗の若者ノリが苦手な地元のオッチャン、オバチャン、地元のヤクザ、明るい場所でアダルトビデオを借りるのが恥ずかしい内気なお兄さんたち、などの大手のツタヤでは居心地を悪く感じるような人たちが主な客層。
 
小さい店には小さい店なりの需要があった。
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 
 

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