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ゴアに目覚める話17 ゴアに目覚める話17

放浪記 第百三十四話
約3分 · 1,565字

行きつけのレストラン

12月にはもう完全に乾季で、数週間前までの雨の面影は、もうどこにも無い。

季節としては真冬だが、昼間の日差しのもとにいると、暑くて倒れそうになる。

だが、意外にも夜はかなり冷え込み、夜中にバイクに乗るときなどは、冬用のジャケットを着ていてもちょうど良かったりする。

僕が住んでいた辺りは冬の乾季には砂漠化して、赤い大地とヤシの木だけが生えているような光景だ。

通りの向こうにはビーチと海が見える。

この辺りは車などはもってのほか、自転車やバイクも通らず、通るのは一時間に一度ほど人か牛が歩いている位のものだった。

夕方には何人かの子供達が通る。

外国人の姿を見ることは、ほとんど無かった。

観光業の中心的な地域の近くだったが、道のつくりが行き止まりになっていて、人が通ることのない、秘密のスポットになっていた。

ここでは時間が止まったかのような、ゆっくりとした平和な景色が流れる。

ある友人はドクター・スランプ・アラレちゃんの漫画に出てくる、ペンギン村のようだという表現をしていたが、言い得て妙だと思う。

アッケラカンとした平和さの中に、まるで漫画のような非日常さを抱え込んでいた。

そんな、静かで人通りのないところに、そのレストランはあった。

10メートル四方ほどの玄関先に、ココナツの葉っぱで屋根と壁を作った掘っ立て小屋の中に、4つのプラスチックのテーブルと、20脚ほどのプラスチックの椅子が並ぶシンプルなレストランだ。

ボンゴレ・スパゲティ

皆それぞれお気に入りのメニューがあるのだが、僕は、ボンゴレ・スパゲティが大のお気に入りだった。

一般的なボンゴレ・スパゲティはアサリと白ワインのパスタが多いが、ここではカラス貝とトマトのソースだった。

カラス貝だったらボンゴレじゃ無いじゃん、などというツッコミをインドのレストランに対してするのは粋では無いのでやめて下さい。

インドは煮込み料理の国なので、多くのレストランで煮込みすぎたスパゲティを出されるのだが、ここではちょうどいい固さにゆで上げられていた。

ゴアは漁師の町なので新鮮な魚介類が安く食べられることが魅力だ。

市場へ行けばその日に水揚げされた新鮮な魚介類が所狭しと並ぶ。

美味しさの笑い

初めてここのボンゴレ・スパゲティに出会ったときは、その美味しさに目を見開いて笑いが止まらなかった。

美味しすぎると笑えてくるのだ。

一緒にいたYさんに味見させると、彼も目を見開いて笑い出した。

僕たちは顔を見合わせながら、うますぎるーーーと大爆笑していた。

あまりに美味しすぎるので、僕のボンゴレ・スパゲティの半分をYさんに分け与え、もう一皿頼んだくらいだ。

美味しさの秘密

その美味しさの秘密の一つはカラス貝の鮮度で、レストランは在庫を少なくして鮮度を保っている。

だから、タイミングが悪いと在庫を切らしている事がある。

だが、だからといって注文できない訳ではない。

シェフの父ちゃんが出てきて、"大丈夫だ、ちょっと待ってろ。Rさん、ちょっとバイクを貸してくれ。"と言う。

親切なRさんは言われるままに鍵を渡し、バイクにまたがった親父は30分ほど離れた街までカラス貝を買いに行ってくる。

そういう日は料理が出てくるまで3時間待ちなどになる。

マジかよ~とか思うのだが、3時間待った末の空腹の後に食べる新鮮なボンゴレ・スパゲティの事を思うと我慢できたりもするから不思議だ。

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