西成での文化人生活の話7(放浪記052)

放浪記 #52 約3分 1,720字
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レコードヤクザ

僕がトータスの音楽によって音楽的覚醒をしたのと同じ時期に、僕と兄は新たな趣味に走っていった。

当時のサブカルチャーオタクたちの間で、レコードヤクザと呼ばれる現象が発生していた。

それは、ヤクザのように貪欲にレコードを大量に買いあさり、ありとあらゆるB級音楽を愛でると言う文化だった。

どちらかと言うと色々なものに対する収集癖のある兄の趣味だが、僕も強く影響されていた。

兄は他にも、スターウォーズのフィギュアやレアなスニーカーなども収集していて、兄の家の部屋の一つは収集品専門の物置になっている。

カリスマレコード店

僕たちは時間に余裕のある日を見つけて、朝から中古レコード店巡りをしていた。

よく行っていたのは大阪梅田の近くの電車の高架下にある巨大な中古レコードショップだった。

この店の品揃えはものすごく、300平米ほどの敷地にダンボール箱満タンに詰められたレコードが並んでいる。

そこにはメジャーで人気のあるアーティストのレコードなどはなく、あるのは20年前に人気だったアーティストや、30年前に全く人気のなかったアーティストなど。

知られていないからと言って悪い音楽というわけでもなく、名も知れぬマイナーなアーティストのかっこいい曲を見つけた時には、なんとも言えぬ嬉しさを感じていた。

この店の面白いのはその値段設定で、プレミアのつく高い値段のものから、売れ残り商品の安い値段のものまで、ものすごい幅があった。

殆どのレコードは500円を超えることは稀で、大体が300円以下。

中には100円を切るものもあり、20円や5円や2円の値段設定もある。

究極のところは、−47円や−100円などがあり、マイナスの値札が付いているレコードをレジに持っていくと、その分だけ値引きしてくれるという特典付きだ。

レアガチャ

このマイナスの値段設定が僕たちを熱くさせた。

今で言うレアガチャみたいな感じで、数万枚に1枚くらいしか入っていないであろうマイナス設定のレコードを目当てに数時間かけてレコードの山を掘り進んで行った。

苦労して見つけると、大概は何故誰も買おうとしないのかが納得できるようなレコードで、その人気のなさ具合が僕たちレコードヤクザのマニア心をくすぐるのだった。

その店ではレコードを試聴することができなかったので、名前を知らないアーティストのレコードを購入する基準は、カバージャケットを見てピンとくるかどうかと言うジャケ買いだった。

目当ての音楽ジャンルのコーナーへ行き、一枚づつジャケットと値札を見ていく。

最初のうちは絵柄をじっくりと見ているのだが、慣れてくると一枚あたり2秒くらいまで高速化されてくる。

パタパタとリズム良くめくりながら、気になる絵柄で指を止める。

値段とジャケを見直して、検討する価値がありそうなら横に避けておく。

そして、またパタパタとめくっていく、の繰り返し。

毎回毎回、飽きもせずに数時間かけてレコードを選んでいた。

僕も兄もレンタルビデオ屋でバイトしていて、無料で聴ける音楽はいくらでも手に入ったし、ミュージシャンの友人も多いのでCDを貸してもらうことも出来た。

僕たちは音楽が聴きたいからレコードを買っていたと言うよりも、音楽と触れていたいからレコード屋に行っていたようなものだ。

聴いたり、演奏したり、踊ったりするよりも、レコードをパタパタとめくることが僕たちの音楽欲を満たした。

そしてこれは、僕たちがやっていたテープ・コラージュ・ユニットにおいて重要な行為だった。

廃棄される直前のレコードを山の中から掘り出し、サンプルを切り取って、コラージュ音楽として蘇らせる。

ガラクタを集めて作ったロボットに生命を宿らせるような、創造の喜びがあった。

つづく。。。

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