北アルプスの山小屋で働く話28(放浪記469)

放浪記 #469 約2分 1,010字
目次

Sさんの仕事

Sさんは、山小屋の通常業務である、食事を作ったり布団を畳んだりなどということには関わらない。

山の専門家として、登山道の整備の他に緊急時のレスキューなどの素人では事足り無い山作業の専門家だ。

彼はこの40年の間に数多くのレスキューをこなし、数多くの登山家の死を目にしてきた。

体験談

SさんはJさんの作った最高の料理を最高のお酒と共に頬張りながら体験談をいくつか語ってくれた。

山という大自然の環境や、人間の生き死にに関わるような世界には不思議なことが稀に起こる。

ある日Sさんが登山道を歩いていると、美しい蝶々が目の前に止まった。

彼が歩いて近づくと、その蝶々はまた飛んでいき、少し離れたところで止まる。

また近づくと、また飛んでいき、また少し離れたところで止まる。

蝶々はそう言った行為をひたすら続ける。

逃げもせずに付かず離れずの距離を保つものだから、Sさんは不思議に思い始めた。

導き

蝶々は、その行為をしばらく続けた後に登山道から脇に逸れたところで羽ばたきを止めた。

ひたすら目の前を飛び続けていた蝶々が脇に逸れたものだから、不思議に思ったSさんは、蝶々の後をつけていくことにした。

普通の登山家では危なくて脇道に降りることはできないが、Sさんは別格だ。

彼は、蝶々について危険な山道を降り続ける。

そしてなんと、降り切った先には干からびた人間の死体があったのだ。

その後

Sさんは後日に山の救助隊と共に戻ってきて、死体を引き上げた。

後にわかったことでは、その死体は2年前に遭難した登山家のものだった。

当時Sさんも遭難者の救助に当たっていたが、いくら探しても見つけることができず、捜索は打ち切りになったのだという。

Sさん曰く、放置されたままの死体は、誰かに見つけてもらい弔ってもらいたかったのではないかという。

その死体の思いが蝶々を動かしたのだろうと。。。

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