自転車で沖縄へ向かう話11(放浪記505)

 

覚悟

 

ここまで来て引き返したくはないというヤケクソの思いで覚悟を決めた。

 

 

僕は右利きなので、体の右側に自転車を持つと、自分の体が崖に面することになる。

なので、左手で自転車を推し、万が一に何かが落ちるとしたら、自転車が先に落ちるようにして、幅40センチの排水溝の上を進むことにした。

 

 

距離はたったの4メートルほどだが、崩れた道路を見下ろすのは全く気持ちの良いものではない。

 

 

ここまで崩れ落ちていたら、この排水溝が今すぐ崩れ落ちる可能性も十分にある。

 

 

今ここで突き進む以外の選択肢はないので、呼吸を整えて、恐る恐るゆっくりと進み始めた。

身体はできる限り壁側に寄せ、自転車もできる限り身体に寄せて、細心の注意でゆっくりと進む。

なかなかの恐怖だ。

 

 

運良く排水溝は崩れることもなく、僕自身もバランスを崩さずに無事に道の反対側までたどり着いた。

 

 

通行止めの呪いを乗り越えたのだ。

 

 

まさか自分がこのような怪我をするリスクのある冒険をすることになるとは思ってもみなかったが、無事に乗り切ることことができた。

 

 

崖崩れを乗り越えた先はすぐに峠の頂上になっており、あとは道を降っていくだけだった。

 

 

旅の神様に感謝し、颯爽と気持ちよく下り坂を駆け降りる。

それはまさに自転車旅の醍醐味だった。

 

 

 


九州へ

 

 

四国では崖崩れの冒険以外は、特に問題もなく自転車で旅を続け、ほぼ毎日温泉に入って、美味しいものを食べて、気持ちよく過ごしていたが、四国の旅も終わりに近づいてきた。

 

 

四国の左上には細長い半島が伸びているのだが、その半島の先まで行き、フェリーに乗って海の向こう側へと向かう。

 

 

その先にあるのは九州の大分県だ。

四国も初めてだったが、九州も初めて。

 

 

自分の足で自転車を漕ぎ進め、大地の上に眠るという旅のスタイルは、今までのバックパックと安宿の旅では感じられない深い充実感を与えてくれていた。

 

 

自転車なので交通費は無料だが、その分食費がかさむので、インドの安宿でグウタラしながらレストランで食事するよりも結果的には旅費がかかっていたが、満足度や達成感などは比べ物にならないものがあった。

 

 

僕は気持ちの良い自信に満ちて四国を後にした。

 

 


つづく。。。

 
 
 

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