チベット自治区を旅する話4(自叙伝074)

チベット自治区を旅する話4(放浪記074)

誕生日パーティー

 
 
 
 
僕たちの泊まっていたゲストハウスには結構な人数の旅人がいた。
 
 
 
 
 
全部で50人くらいは居ただろうか。
 
 
その内の3割ほどは日本人で、ゲストハウス内での多数派だった。
 
 
 
 
 
色々な日本人の旅人がいて色々な個性があり、刺激的な会話を楽しんだ。
 
 
 
 
 
皆がそれぞれ仲良くなり、一緒に観光したり食事に行ったりするようになった頃に、僕の二十歳の誕生日がやって来た。
 
 
彼らには、僕は二十歳になる前に旅をしたかったと言う話をしていたので、その流れで僕の誕生日を祝ってくれる事になった。
 
 
 
 
 
 
僕は、エホバの証人の家庭で育ったので、エホバ神以外は祝わないと言う決まりに従い、自分の誕生日を祝ったり誰かの誕生日パーティーに参加したりした事が一度も無かった。
 
 
 
 
 
 
生まれて初めて誕生日を祝うことに、少し恥ずかしくて照れながらも、祝ってもらえる事が嬉しかった。
 
 
 
 
 
その日の夜は僕たちのドミトリールーム(共有部屋)に、集まってパーティーを開く事になった。
 
 
 
 
 
 
最初は数人のパーティーの予定だったのだが、参加者がさらなる参加者を呼び、最終的には15人の日本人と同じ部屋に滞在しているドイツ人とメキシコ人を合わせて総勢17人が集まって来て、盛大なパーティーになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

同い年

 
 
 
 
 
皆が、ラサで作られたラサビールや、モモなどの差し入れを持ってきてくれた。
 
 
 
 
 
皆でモモをつまみながらビールを飲む。
 
 
チベットは標高が高いので、酔いが早く回る上に、少量でも簡単に酔っ払う。
 
 
 
 
 
パーティーに来てくれた人には僕と同い年の男の子も居た。
 
 
彼も中国への留学生で、夏休みを利用して、大学の日本人の友人たちと一緒にチベットへやって来たようだ。
 
 
 
 
 
 
彼は年上の友人たちに連れられてきた、あるいはひっついてきたようで、見知らぬ異文化の世界に怯えまくっていた。
 
 
中国語の勉強に自信が無いことが不安で仕方がないらしく、完全に弱気の末っ子キャラを演じていた。
 
 
そのことを同い年の僕を引き合いに出してからかわれたりしていて、なんとも言いようのない変な違和感を感じた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

一線

 
 
 
 
 
高い標高によるビールの酔いも手伝い、話が弾む。
 
 
パーティーも数時間が経ち、話がどんどんと盛り上がってきた頃に、僕の旅友の北京留学生が一線を越えてしまった。
 
 
 
 
 
彼は先祖が何処ぞの大名らしいのだが、酔っ払った勢いでオレオレ自慢を始めてしまったのだ。
 
 
 
 
 
延々と続く演説に業を煮やした沖縄在住の文学専攻のイカツイお兄さんが、そろそろいい加減にしろと注意したことが切っ掛けで、酔っ払った二人の言い争いが始まってしまった。
 
 
 
 
 
僕の誕生日パーティーだと言うこともお構いなしに言い争いは続いて行き、どうしょうもなくなって気まずい雰囲気のままパーティーはお開きになった。
 
 
 
 
 
結果的には残念な事になったが、生まれて初めての誕生日パーティーをチベットと言う特殊な場所で祝えたことは嬉しかったし、他の旅人との出会いや繋がりが出来た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

旅友

 
 
 
 
僕の旅友の北京留学生達はあと数日で北京へ戻るのだが、僕はこのままインドへと旅を続けたい。
 
 
 
 
 
でも一人で旅するのは少し不安だ。
 
 
 
 
 
同じ想いを持ち、同じルートで旅しようとしている旅人は他にも居て、誕生日パーティーで出会うことが出来た。
 
 
チベットを抜けてネパールへ向かう道路事情はかなり酷くて不確かな事だらけだったので、誰が一緒に旅する事になるかは分からなかったが、同じ道程を進む日本人が他にも居ると知れたことは心強かった。
 
 
 
 
 
 
新しく出来た旅友は、留学生の夏休み旅行とは違い時間に余裕があったので、僕と似た旅の感覚を共有することが出来た。
 
 
 
 
 
北京留学生の旅友達が北京へ帰った後は、僕は新しい旅友と時間を過ごすようになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 
 
 

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