チベット自治区を旅する話5(自叙伝075)

チベット自治区を旅する話5(放浪記075)

ガンデン寺

 
 
 
 
運の良いことに、僕の滞在している期間中に12年に一度のチベット仏教の大祭に出くわす事が出来た。
 
 
(当時は12年に一度だと聞いていたが、調べたところ毎年やっているらしい。ここでは僕の当時の感覚で書いていきます。)
 
 
ラサからバスを乗り継いで数時間のところにあるガンデン寺と言うポタラ宮の様な所で、壁から超巨大な布を掛けると言う。
 
 
 
 
 
その布はタンカと言うものでチベット仏教の紋様が描かれているらしい。
 
 
このイベントがすごいのはそのタンカの大きさで、数十メートル四方の大きさがあるらしい。
 
 
 
 
 
 
僕は朝早くに起きて、友人たちとバスを乗り継ぎガンデン寺へ向かった。
 
 
 
 
 
大きな祭りだけあってバスの時点ですでに混み合っている。
 
 
座る場所が無く、立ったまま数時間の悪路を揺られる。
 
 
 
 
 
 
ガンデン寺に辿り着いた時には既に疲れ切っていたが、祭りの熱気に活気づけられる。
 
 
 
 
 
 
流石に12年に一度の大イベントだけあってものすごい量の人が集まって来ている。
 
 
ガンデン寺の周りはもちろんの事、反対側にある寺を見渡せる山の斜面まで人で埋め尽くされている。
 
 
 
 
 
 
来ているのは、殆どが熱心なチベット教徒の家族か、チベット僧で、外国人観光客の姿は全体の総数から比べると遥かに少ない。
 
 
 
 
 
 
僕たちも山の斜面に場所を確保し、タンカが掛けられるのを待つことにした。
 
 
 
 
 
 
僕たち外国人の姿は田舎から出てきたチベット人にはかなり珍しいらしく、大きな笑顔を持って迎えられた。
 
 
近くに座っていた家族連れが、こっちへ来て一緒にお昼を食べようと誘ってくれる。
 
 
地元のチベット人のお母さんが大きなお祭りのために腕をふるった家庭料理の味は、レストランで食べるチベット料理の味とは比べ物にならない程美味しくて、僕は一気にチベット料理が大好きになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

チベット僧の痴漢

 
 
 
 
 
食事が終わり、タンカが降ろされるのを待っている間、僕はチベット人たちと会話をしようと試みたが、中国語を話す留学生の友人たちはすでに北京に帰っていたので、僕たちには共通の言語が無かった。
 
 
言葉が通じないなりにコミュニケーションを取っていると、チベット僧の二人組が僕の足を指差して笑いながら、足に触れてきた。
 
 
 
 
 
僕の旅の予定は、元々は上海から南に下る予定だったので、暖かい地域に合わせた服しか持っていなく、この時も膝丈の半ズボンを履いていた。
 
 
その半ズボンから出た生足の内腿の毛を不思議そうにつまみながら撫でてきた。
 
 
 
 
 
僕は一瞬、何が起こったの分からずに混乱した。
 
 
 
 
 
僕のスキンヘッドに近い坊主頭がホモの人に好かれるのか、ツタヤでバイトしていた時、それっぽいお客さんに声をかけられることが稀にあった。
 
 
この時は、ホモのチベット僧に痴漢されているのかと思い、一瞬身構えたがどうもそういう雰囲気ではない。
 
 
 
 
 
真っ昼間の宗教イベントの人混みのど真ん中で、家族連れなども周りにいる。
 
 
人影に隠れて痴漢をするような状況ではない。
 
 
 
 
 
少し内ももを触られたあとに、チベット僧は自分の僧衣を捲くりあげ、自分の足を見せた。
 
 
周りのチベット人は笑っている。
 
 
 
 
 
やっとの事で気づいたのだが、チベット人は足に毛が生えていないらしい。
 
 
まるで脱毛した女性の足のようにツルツルだった。
 
 
 
 
 
内腿に毛の生えている僕の足は、彼らの目には奇妙に映るらしく、好奇心により触られていたのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

タンカ

 
 
 
 
しばらくすると周りがざわついて来た。
 
 
いよいよ噂のタンカが降ろされるらしい。
 
 
 
 
 
僕たちの座って居た場所は、ガンデン寺からは数百メートル離れていて、僧侶たちがアリの様に見える。
 
 
ガンデン寺の上部をアリが蠢いていると思った直後、一気にタンカが降ろされた。
 
 
 
 
 
 
これだけ離れていても模様がはっきりと見える。
 
 
中央にブッダが配置され、その周りに瞑想する聖者たちが描かれるような絵柄だった。
 
 
 
 
 
近くに行って見たかったが、あまりにも凄い人だかりなので、近づくのは諦めた。
 
 
 
 
 
数万人は居たんじゃないかと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

帰路

 
 
 
 
 
帰路もまたバスで帰るのは、かなりしんどいので、乗り合いタクシーで帰ることにした。
 
 
値段は少し張るが、一日に2度もあのバスのしんどさを体験したくない。
 
 
 
 
 
帰路の途中、大きな道路の交差点が近づいてきたところで、一緒に来ていた日本人の旅人の一人がここで降りると言い出した。
 
 
交差点には道路と荒野以外何もない。
 
 
祭りの日なので車は通るだろうが、現時点で僕たち以外の車は見渡す限り一台も見えない。
 
 
 
 
 
 
彼は今からヒッチハイクをして別の街まで行くという。
 
 
その街は外国人の立ち入りを禁止しており、公共交通機関で行くのは難しいらしい。
 
 
 
 
 
僕は、他人事ながら不安で仕方がなかった。
 
 
見渡す限り商店どころか民家もなく、車すら通っていない。
 
 
夜になれば凍え死んでもおかしくないような標高4000メートルの地域だ。
 
 
 
 
 
だが彼は、僕の心配などお構いなしに小さなバックパックを肩に担いでタクシーを降りた。
 
 
彼を置き去りにして、僕たちのタクシーはラサへと出発する。
 
 
 
 
 
 
ヒマラヤの荒野のど真ん中で小さくなっていく彼の人影は完全に自立していて無性に格好良く見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 
 
 

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