ゴアに目覚める話38(放浪記155)

 
 
 

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体力の限界

 

クタクタに疲れ果てて家に帰る。

歩いて10秒で家に帰れるのは不幸中の幸いか。

 

この時の疲れは文字通り限界を超えていた。

明らかにやりすぎてしまった。

 

パーティー前にすでに限界に近づいていたのに、LSDで強制覚醒して踊り続け、限界を遥かに超えたところで精根尽き果てた。

 

弱りきったところへ風邪の菌が入ったのか、あるいは元々持っていた何らかのウイルスが極度の疲労を通して活性化したのかは分からないが、帰宅直後から体調がみるみるうちに悪化して行った。

その後も二晩寝続けたが体力は回復せず、熱があり咳が出る。

 

ジョイントの吸いすぎもあるだろうし、ゴア特有の土埃や乾燥した空気も影響しているだろう。

もちろんドラッグの取り過ぎもある。

 

この場合に悪影響を与えたのは、ジョイントに含まれるタバコとLSDに含まれる覚醒剤などの混ぜ物が原因だと思われる。

LSDその物自体は人体に無害で、大麻樹脂自体も体に対して大した害はない。

ひとかじりしたエクスタシーも極微量なので問題はない。

 

だが、フィルター無しで吸うジョイントに含まれるタバコとLSDに含まれる混ぜ物は身体に無理を与えたようだった。

 

そして一番の問題は限界を遥かに超えた時点でクラッシュしたことだと思う。

 

 

休養

 

最高に楽しかったパーティーを頂点として、下り坂を転げ始める。

身体の解毒作用が始まったようだ。

 

日本にいた時はタバコもお酒もコーヒーすらも飲まなかったのに、ゴアに来て以来、毎日吸うジョイントに含まれるフィルター無しのタバコは、若くて純粋な僕の体には大きな負担になった。

 

ひどい体調不良は数日で収まったが、無理を続けていたので体力が回復しきれない。

よほど身体への負担が大きかったんだろう。

無茶をして飛ばしすぎた代償としては当然の事だ。

 

パーティーは相変わらず頻発していて、遊びには行くが、体調が悪くていまいちダンスを楽しめない。

僕は悔しさに苛まれていた。

 

 

友人の輪

 

だがパーティーに行けば気の合う友だちが沢山いて話しているだけでも相当に楽しい。

社交辞令としてジョイントを回し合うが、咳き込んで吸うこともできない。

ただひたすら我慢の時だった。

 

仲良し日本人グループの輪はどんどん大きくなっていた。

僕にとっては友人たちの輪は非常に居心地がよく、受け入れられている感じが僕を安心して飛び立たせた。

飛びすぎてクラッシュしたが。。。

 

日本人の輪を喜んでいるのは僕たちだけでなく、パーティーに来ている他の人種たちも喜んでいた。

“日本人は礼儀正しく、にこやかで仲のいいのが良くわかる。

日本人のグループがパーティーに来ると、雰囲気が一気に良くなって盛り上がる。

日本人のグループの姿をパーティーで見ると、今日のパーティーは当たりだと確信する。”

などの言葉が聞こえて来ていた。

 

 

予定変更

 

帰国予定や移動予定の人たちが多くいたが、あまりにもゴアが楽しすぎて誰もゴアから出る事ができない。

竜宮城にハマって出るに出られなかった浦島太郎のような感じか。

 

この頃には友人たちの間で、旅行の予定を全部変更してゴアだけで過ごす、帰国のための飛行機のチケットを破り捨てる、誰かにお金を借りて滞在を延長するなどが、当たり前になっていた。

 

それはもちろん楽しすぎて出られないというのもあるが、LSDで意識が拡大することによって、今まで物質的、社会的な事だけが重要だった人達が、感情や経験や友情を重要視するようになったからでもある。

 

かく言う僕もお金がなくなる限界までゴアで過ごそうと決めた人間の一人だ。

 

大好きな友人たちが大好きなゴアで最高に楽しんでいるのに、自分だけがそこに居ないなど到底受け入れられなかった。

ゴアの存在はあまりにも圧倒的過ぎて、それ以外の選択など無意味に思われた。

 

 

 
 
 

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