放浪記
20年以上の世界放浪を綴った自伝的連載。各地での出会いと別れ、日々の断片を残しています。
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北アルプスの山小屋で働く話7(放浪記448)
山小屋での日々がすぎるにつれて、他のバイトの人たちと仲良くなり、色々な話が漏れ聞こえてくる。 特に社長に関する噂話は奇妙なものが多かった。 この社長の祖父は、趣味の人だった。 自然を愛し、山を愛し抜いた。 その思いが高じて小さな山小屋を建てて、山小屋の運営が始まった。 その初代社

北アルプスの山小屋で働く話6(放浪記447)
日本社会の中で働くと、色々な法律の規制がある。 それは、労働者を守るための規制でもあり、労働者を閉じ込めるための規制でもある。 守るための法律としては労働基準法や、労働時間の規制、最低賃金などがある。 だが恐ろしいことに、山小屋の仕事においてはそれらの法律は適用されなかった。 山

北アルプスの山小屋で働く話5(放浪記446)
不気味な朝礼での唱和や、仏教修行のような環境整備が終わった後に、まともな仕事が始まった。 僕もIちゃんもR君も初日なので、仕事を始める前に仕事全体を知ることから始まった。 小屋の仕組みはどうなっていて、どう言った流れで仕事が進んでいくのか。 階段の歩き方から靴の脱ぎ方まで、事細か

北アルプスの山小屋で働く話4(放浪記445)
朝8時に起きて従業員の食堂へ向かう。 朝食の時間だ。 朝ごはんもしっかりとした物が出されて、一日中働くだけのエネルギーを与えられる。 食事は常に満足できるという話は本当のようだ。 驚いたのは、食事が終わり休憩を挟んだ後だった。 皆が再び食堂に集まり朝礼が始まる。 それぞれの部署の

北アルプスの山小屋で働く話3(放浪記444)
山小屋について直ぐにバイト部屋をあてがわれた。 僕たちはカップルとして到着したが、カップルに対する優遇はなく、別々の部屋になった。 とりあえず一休みできることに感謝した。 体は完全に疲労の限界を超えていた。 休む以外には何もできない。 バイト部屋は二畳ほどの大きさの屋根裏部屋だ。

北アルプスの山小屋で働く話2(放浪記443)
中継小屋へ着くと、Mさんという口髭を蓄えた陽気なお兄さん/おじさんが出迎えてくれた。 満面に笑みを浮かべて、暖かく話しかけてくれる。 こんな感じの人なら一緒に働いてみたいと思わせるような気持ちのいい人間だ。 Mさんは、もう何年も中継小屋の支配人を続けているらしい。 彼はすでに僕と

北アルプスの山小屋で働く話1(放浪記442)
5月の後半になり、待ちに待った山小屋バイトの日がやってきた。 僕はモロッコでの大自然の体験の後に大阪に住むことになったので、近代化されたコンクリートでの暮らしに辟易していた。 ガンドルフさんに教わった自然と調和した生き方を実践したかったが、大阪で実現することは難しかった。 都会か

日本へ向かう話6(放浪記441)
ロンドンでアルバイトをしていた時に革ジャンをもらった話は、以前にこちらの記事で紹介した。 なんかものすごく高そうな革ジャンだったので、日本のオークションで売るつもりで日本に送ることにしたものだ。 さらに調べてみて、このクロムハーツというブランドの革ジャンはかなりの値打ちものだと分

日本へ向かう話5(放浪記440)
僕がチェーンレストランでうだつの上がらない日々を過ごしている間、恋人のIちゃんは日々劇団の練習に励み、輝きを増していた。 特に公演まえの1週間は、練習の激しさを増し、忙しく日々を過ごしていた。 僕は今までにそういった集団行動や、練習に励むなどといった経験がなかったので、何となく羨

日本へ向かう話4(放浪記439)
ガストのバイトで驚いたことは他にもある。 ある日、たまたま店長が管理している商品原価の書類を目にすることがあった。 店長は毎日、原価と睨めっこして売り上げを増やそうと努力している。 その書類を覗き見たところ、あまりにもの原価の安さに度肝を抜かれた。 千円以上で売っているステーキの

日本へ向かう話3(放浪記438)
山小屋の仕事が決まったのはいいが、仕事が始まるまでまだ二ヶ月ほど期間がある。 Iちゃんは劇団の練習で忙しいが、僕は特にすることもなくぶらついている。 どちらにしろお金がなかったので、時間潰しがてらにバイトをすることにした。 以前、快適にピザ屋で配達のバイトができたので、また配達の

日本へ向かう話2(放浪記437)
モロッコを最後にして別れたIちゃんに再会する。 Iちゃんの実家は僕の実家からそう遠くはないので、気軽に会える。 僕としては、大きな別れの後に大きな流れの変化があってまた再会できることは、何となく運命づけられているような気がして気分が良かった。 だが、久しぶりに再会したIちゃんはそ

日本へ向かう話1(放浪記436)
帰国の飛行機は何の問題もなく、関空へと辿り着いた。 1年7ヶ月ぶりに帰ってきた日本はどことなく違和感があった。 見慣れた感覚と懐かしい感じがすると同時に、自分はもうそこには属していないという部外者の疎外感を感じていた。 自分が旅を通して体験したことはあまりにも異次元すぎていて、感

イギリスへ向かう話2(放浪記435)
僕がロンドンについて1週間もしない頃に、大転換が訪れた。 日本からパソコンが届き、部屋と仕事を探し始めようかという頃だ。 祖父が緊急入院したというメールが母から届いたのだ。 母の父であり、僕が実家を出るまでは一緒に暮らしていた祖父だ。 体調を崩して入院しており、そう長くはないとい

イギリスへ向かう話1(放浪記434)
Iちゃんのフライトは僕よりも先だったので、日本へ旅立つお見送りをした。 お互いに納得ずみの別れなので、悲しみなどはない。 納得しあい、笑顔でお互いを見送ることができた。 今後どうなるかは全くわからないが、またいつか会う日が来ることを分かっている。 強い感情に圧倒されるが、ネガティ

モロッコを周遊する話5(放浪記433)
(以下内容転載禁止、法的対処有。) 空港内という状況で、Cさんはとっておきの秘密を暴露してくれた。 Cさんが履いているサンダルの中には、2キロものハシシ(大麻樹脂)が隠されているというのだ。 片方のサンダルに1キロずつ。 分厚いゴムのサンダルの内側を掘って、密封加工したハシシを仕

モロッコを周遊する話4(放浪記432)
僕たちは、ガンドルフさんやFさんに別れを告げて、モロッコを出る心構えをしていた。 この後は、僕はロンドンへ住み、Iちゃんは大阪で演劇の道に進む予定だ。 モロッコともお別れだし、僕たちの関係も無期延期になろうとしていた。 楽しかったモロッコの旅が終わろうとしている。 しつこく引っ張
モロッコを周遊する話3(放浪記431)
僕たちは、街を出て田舎へ向かう。 田舎といっても街から車で40分くらいの距離だが、たったの40分で雰囲気はガラリと変わる。 モロッコの街の都市生活から、地中海沿岸の乾燥した港町へ。 最初に着いたのが、近隣に住むモロッコ人ヒッピーカップルの家だった。 今度はFさんの家とは打って変わ

モロッコを周遊する話2(放浪記430)
ガンドルフさんは田舎の方に住んでいるので、まずは街に住むFさんと再会してから、一緒にガンドルフさんに会いにいくことにした。 Fさんはオアシスにいた時から都会的な雰囲気を醸し出していたが、家に遊びに行ってみると、やはりその雰囲気は当たっていた。 久しぶりに体験する都会ぶりと、Fさん

サハラ砂漠の滝でキャンプする話6(放浪記427)
向こうには湖が見えている。 満月の下で泳ぎたいところだが、街の住民の飲み水になるものなので、ガンドルフさんから泳ぐことは禁止されている。 満月の明かりに照らし出された湖は、暗闇の中に浮かび上がり、高貴な姿を光らせていた。 僕たちは光る湖を見ながら語り合った。 過去の暮らしの話や、

モロッコを周遊する話1(放浪記429)
ついに別れの時が来た。 Yくんとの別れであり、結果的に二ヶ月半ほど滞在することになった砂漠の街ワルザザードとの別れであり、フェスティバルからみの色々な思い出との別れである。 そしてガールフレンドのIちゃんとの別れへと向けた旅立ちである。 僕たちは、北にあるモロッコ文化の古都マラケ

サハラ砂漠の滝でキャンプする話7(放浪記428)
満月の日の次の日は、タープの下の木陰でゆったりと過ごした。 その日は日が暮れてすぐに眠りにつき、朝日が昇るまでの時間をしっかりと眠り、疲れをとった。 これからしばらくは移動の旅が続く、体調を整えておくことが優先事項だった。 次の日には僕たちはテントをたたみ、キャンプ道具をしまい、

サハラ砂漠の滝でキャンプする話5(放浪記426)
僕たちは、滝の上側にある少し盛り上がった岩場に座り、夕陽を見ていた。 夕陽が沈むと、満月が地平線から昇ってくる。 砂漠においては、家の天井もなければ、高層ビルもない。 山も森もなければ、雲ひとつとしてなく、月が昇ればその全容が目の前に現れる。 周囲はまだ明るいので、満月の姿はうっ

サハラ砂漠の滝でキャンプする話4(放浪記425)
Yくんは英語がペラペラだし、Iちゃんもモロッコに来て以来、英語がどんどんと上達して行っていて、みんなと会話を楽しんでいた。 僕も、モロッコに来て以来、ものすごい英語の上達があったが、元来は中学の英語のテストで1点をとった身である。 十倍に上達しても10点程度のものなので、そこまで