皆さんこんにちは、Qリプトラベラーです。
先日から天才トラウマセラピスト、ティール・スワンの言葉を翻訳して行っていますが、今回は意識の断片化についての記事です。
これはティールの教えの根幹になるような重要な話で、そもそもトラウマとは一体どういう現象なのかという基礎の部分を話しています。
非常にわかりやすく説明していて、これらの内容を理解するだけでも、人間の心の仕組みへの理解が深まるようなものになっています。
こちらのマガジンで、これ以外のティールの言葉を翻訳しているので、合わせてお読みいただけると、より一層理解が深まると思います。
それでは早速翻訳していきます。
(翻訳ここから)
全ての生き物は、トラウマに遭遇する以前には、全体性を持った意識の状態にあります。
一体性の状態にある、あるいは自分自身の全体性を体験していると言えるでしょう。
トラウマとは、解決することのできない経験が引き起こす感情的・精神的苦痛の状態のことです。
虐待を受けたり、戦争や愛する人の喪失などの悲劇だけがトラウマを作るのではありません。
一般的な病院で生まれてくることはトラウマになります。
母親から離乳することはトラウマになります。
3歳児にとって、スーパーで母親を見失うことはトラウマです。
どんなに優秀な親でも、子どもがトラウマを抱かないように育てることはできません。
ここでの問題は、トラウマができた時に、何らかの形でトラウマ経験を統合して解消することができなければ、そのトラウマ経験から離れるしか対処する方法がないということです。
意識とは水のようなものです。
河の流れゆく様を想像すると、意識の中で起こる乖離のプロセスを理解することができます。
上空から河を眺めると、大きな川が下流に行くにしたがって、いくつもの小さな河に分離していくことがあります。
河が分離するたびに、大きな河の本流の水量は少なくなっていきます。
トラウマが発生して、それを解決できないと、意識が乖離して、意識の一部がメインの意識から枝分かれすることになります。
それは河が分離していくのと似ています。
私たちは自己防衛のために、無意識のうちにそれを行うのです。
トラウマによって意識が分裂する時には、私たちの自我は2つに分裂すると考えると、このプロセスを理解しやすくなります。
自己意識が分断されるのです。
つまり、身体はひとつでも、その身体の中では複数の自分が存在することになるのです。
これをイメージするには、自分の体の中に結合双生児(シャム双生児)がいると想像するのが一番です。
結合双生児はひとつの体を共有しているので、厳密には全てが繋がっています。
しかし、それぞれが独自の自意識を持ち、独自の欲望、ニーズ、視点、強み、弱み、外見を持っています。
例えば、私の中には、戦場の姫のような面、男性提督のような面、小さな泣き虫の子どもの面、女王のような面、猫のような面、地球外生命体のような面、悪魔のような面があります。
私がお願いすれば、名前をつけてくれる人格もいるかもしれません。
一人の人間の中に存在できる人格の数に制限はありません。
私が今までに見た中では、少ない人で三人、多い人では数百人という例もありました。
そして、それぞれの人格には正反対の個性の人格が存在しています。
トラウマが発生する瞬間には、傷つきやすい人格と、その傷つきやすさに対処して自己を保とうとする人格とに分裂します。
私たちの社会が犯した過ちは、心理学者が、多重人格障害と名付けたものに苦しむのは、ごく一部の人だけだと考えていることです。
現実には、すべての人がいくつもの人格を持っているのです。
ここでの問題は、どの程度にそれぞれの人格が乖離しているのかということです。
ほとんどの人は、ある時には自分のことをある名前で呼び、次の瞬間には別の名前で呼ぶというようなことはありません。
しかし、ある状況と別の状況で、まったく異なる行動をとる人がどれだけいるでしょうか?
どれだけの人が複数の「側面」を持っているのでしょうか?
2つの選択の狭間で引き裂かれそうになって、決断することができない人がどれだけいるでしょうか?
これらはすべて、私たちが常に複数の自己を自分の中に抱えていることを示しています。
私たちの抱える苦しみの度合いは、これらの複数の自己同士の不調和の度合いを表しています。
そして、私たちが目にしている外側の世界の苦しみは、私たちが内側に抱える複数の自己同士の戦いを、鏡のように映し出しています。
人類同士が傷つけたり、拒絶したり、辱めたり、拒絶したりしない日はありません。
私たちの住む世界では、常に何らかの戦争や大量虐殺、人身売買が起こっています。
私たちが自分自身の複数の自己を再統合しなければ、私たちの中にはこの世界と同じように、
他の人格を愛する人格、他の人格を憎む人格、他の人格を守る人格、他の人格を支配しようとする人格、他の人格の存在を認めようとしない人格などが常に存在することになります。
他の人格の存在を知らない人格すら存在しています。
それはどういうことかというと、トラウマが発生した瞬間には、傷つきやすい自己と、その傷つきやすさに対処しようとする自己との間に分裂が起こるので、それぞれの人格には正反対の人格があると言ったのです。
これはすごく大事なことです。
なぜなら私たちの自意識は、トラウマに対処しようとした人格の側と同一化するからです。
そのように、自己防衛のために対処している人格と自分自身を同一視することで、私たちは自分自身の弱さから遠ざかることができるからです。
私個人を例にすると、私は知識人であり教師であるという側面と同一化しています。
私の一側面であるこの人格は、自分自身でも理解することができないようなトラウマに対処するために作られたのだと思います。
それはつまり、私の中には自分でも理解できないトラウマに怯えて恐怖と混乱に陥る、子供の自分がいるのだと思います。
別の言い方をすれば、私たちの人格は偽物だということができます。
私たちは、あらゆるタイプの人生を生きる可能性を持って生まれてきます。
その人生の可能性はそれぞれの人生経験によって取捨選択されていきます。
それらの選択は、私たちそれぞれの異なる生育環境において、自分自身の弱さを避けて安全でいられるようにと選ばれてきたものです。
私たちは生き延びるために、自分を傷つきやすくする側面や、世間から嫌われてしまうような側面を抑圧して拒絶し、否定して見捨ててきました。
そうした抑圧の結果、それらの側面は潜在意識となって意識の中に埋もれていきます。
それらの側面は、自意識の枠の外側にはみ出てしまい、自分では気づくことができないものの、周りの人たちにはハッキリと見えるようなものになります。
このフラグメンテーション(断片化)という事柄は「意識」のもつ機能の一つです。
そして、この宇宙の全ては意識でもあります。
それはつまり、どんなものでも断片化できるということです。
この断片化は身体においても起こります。
実際のところ、体のさまざまな部分が持つ意識が断片化することが、身体の不調の最大の原因になっています。
例えばの話、性的なトラウマを経験した女性は、子宮の意識が分断されることで、子宮の各部分が異なる感情や欲望を持っているかもしれません。
彼女は不妊症で、医師にかかっていますが、医師は不妊症の原因を見つけることができません。
もし、彼女の卵巣が私たちと会話ができるとすると、「大切なものがすべて奪われてしまう」と言うかもしれません。
これらの感情は、健康な卵子を作ることを妨げるかもしれません。
別の不妊症の女性の例は、このような卵巣の意識は、多嚢胞性卵巣症候群のきっかけになるかもしれません。
この女性の子宮と会話すると、温かく育むように感じ、「準備はできています」と言うかもしれません。
それと同時に、子宮頸部と会話をすると、「もう二度と誰にも触れさせない」と激しく言うかもしれません。
この例では、子宮頸部は、精子を含むあらゆるものから身を守る役割を果たしているのです。
これらの例でわかるのは、彼女の意識は全く気づいていないかもしれませんが、実際に妊娠を望んでいるのは、彼女の中の一部分だけで、全体のエネルギーは実際に妊娠することには向いていないのです。
それでも、彼女はあなたの顔をまっすぐに見て、「赤ちゃんが欲しくてたまりません」と言うかもしれませんが。
全てのものには意識があるので、それぞれの全てを個別の自己として扱い、それらを観察して理解し、そこから学んで、それらの必要を満たすことで、それらを統合することができます。
そうすることで、それら全てが、全体の中にある調和の取れた一部分になることができます。
断片化した各部分を再び統合するためには、いくつかの戦略があります。
まず最初に、わたしたちは、それらの断片化現象に気づかなければなりません。
私たちが、自分の中でのエネルギー的な変化や物事に対して強く反応している時には、私たちの持つ自己の一つに乗っ取られたと考えることができます。
そのような場合には、その出来事を機会と捉えて、自分の中にあるその特定の部分に意識を向けてください。
分裂した部分と、その正反対の部分の両方にです。
例えば、その時の自分自身を表現しているのは、戦争時の将軍の人格で、その正反対の人格は雛菊の花のようなものかもしれません。
それらの人格に意識的になるための方法の一つは、目を閉じて、心の目でその部分を感じるようにすることです。
現れてくるイメージはどのようなものでも構いません。
それらの現れてきた部分に名前があるのか観察することも助けになるかもしれません。
その現れてきた部分を観察して、その行動や考え方、欲求、必要性、動機などを研究し始めてください。
その部分に対して質問をしてみてください。
その部分と、自分の中の他の部分との関係性を探ってみてください。
これらは、インナーチャイルドワークやパーツワーク、ボイスダイアログ、内的家族システムセラピーなどの手法で使われている戦略です。
もしあなたが、自分自身の断片化を探求する手助けを得たいと思っているのなら、これらの方法を調べたり、これらの方法の専門家に助けを求めたりすることを強くお勧めします。
私たちは、これらの分断されたままになっている各部分に含まれる痛みを解決するという選択ができます。
私たちは想像力を使うことで、この部分のニーズに応え、結果としてその部分が必要としている変化を日常生活の中で実行することができます。
そして、それぞれの部分と、私たちの中にある他の部分との関係を改善することもできます。
そうすることで、内なる平和と統合が生まれます。
私たちは自分自身を内的平和の状態に戻すことができるのです。
これらの手法は、断片化を探求するための最も安全な方法ですが、ここではさらにもっと根本的な方法を公開します。
この宇宙のすべては意識で出来ています。
私たちは自分の身体は自分の意識だけのものと考えがちです。
ですが、メソッド演技法を使う俳優たちは、自分の意識と視点を手放すことで、全く別の誰かの意識に成り切ることができるということを知っています。
彼らは自分自身と全く関係のない役柄に深く入り込むことができます。
そのために、とても暗い役柄を演じた後に、実際に悲劇的な死を経験するというようなことまであります。
それらの場合には、彼らは『フリ』をしているのではありません。
『フリ』をするというのは、自分の意識でもって、他の何かになることを想像して行っています。
『フリ』をしている時には、私たちは自分の意識のフィルターを通して、他の何かを経験します。
メソッド俳優が行っているのは、このフィルターを完全に取り除くことです。
憑依されることを意識的に選んでいるのです。
彼らは自分の身体が別の意識に乗っ取られることを許しているのです。
メソッド俳優は通常、自分自身のアイデンティティをあまり理解していません。
だから、彼らにとってこのプロセスはとても簡単なことなのです。
ですがプロのメソッド俳優でなくても、私たちの誰もが、自分の意識から離れて別の意識に身体を乗っ取らせるといったことが出来ます。
他にも、私たちの一部が別の意識になり、別の一部がその変化を観察すると言ったことも出来ます。
このような意識的な憑依経験は、表の意識から隠されているものを理解するための心理テクニックとして利用することが可能です。
それはトラウマの癒しにも使えますし、自分の中にある分断化したままの様々な意識同士の関係を改善することにも使えます。
これら以外にもたくさんの応用法がありますが、ここでは触れずにおきます。
先ほどの例えを使うならば、左の卵巣の意識にあなたの身体を乗っ取らせると決めることができます。
方法としては、まず最初に、「私は左の卵巣になることを受け入れます。」と心の中で唱えます。
そして、卵巣の意識に対して降伏し、卵巣のエネルギーがあなた全体を埋めていくことを許します。
その後に、卵巣の意識に成り切って、話したり書いたりします。
そこでは「私」という言葉で書いたり話したりしますが、そこで言う「私」はあなた本人ではなく、卵巣が話しているのです。
自分の出した答えについて深く考えず、ただ意識の呼吸のエクササイズをするように、答えを出してください。
この練習中に出てきた言葉や感じたことは、どんなものでも大事なものであり、理由があって現れてきたということを理解してください。
このようなことを自分でしたくない場合には、誰かに卵巣の役をやってもらうことも可能です。
自分と卵巣になりきった相手とで一対一の会話を行い、卵巣のことを理解し、卵巣の傷を解決して、ニーズに直接応える方法を見つけることも可能です。
これらの練習の最後には、「私は今、左の卵巣である自分自身を解放します」と心の中で言います。
そして、自分は誰で、今どこにいるのか?、今は西暦何年なのか?、などを意識して、自分自身へと戻ってきます。
これらの練習を行う時には、どの部分に対しても、それらが悪いとか、変わらなければならないとか、他の部分と統合しなければならないなどと言った態度で行わないでください。
それらの態度は全て、個々の部分に対する抵抗心の表れです。
それらの部分がそのように感じるのには、それなりの理由があったのです。
それらの感情を自分自身から遠ざけるのではなく、より一層自分自身に近づけることが出来るように、純粋に理解しようとする態度で、思いやりを持ってこの練習を行ってください。
再統合とは、あなたの中にあるこれらの側面を無理やりに一つにすることではありません。
また、自分のお気に入りの部分と同一化して、それ以外のものを根絶やしにすることでもありません。
そうではなく、自分はこれらの側面のすべてでありつつ、またそれと同時に、そのどれでも無いと言うことを理解することが重要です。
あなた自身の意識とは、それら各側面の中心に位置する証人のようなものです。
あなたの中にある極端な両極性を維持したまま、それらの間の調和を促進することが出来ます。
それは無限大のシンボル(∞)の中心点に例えることができます。
あなたの意識とは、両極端の中心にある点です。
意識と無意識の間にある純粋な意識です。
そしてあなたの意識は、断片化された側面をただ愛を持って観察することによって、それらの間に調和を生み出すことができるのです。
今回のエピソードは、このように広範囲なトピックに関するものであり、その意味合いも多岐にわたるため、多くの疑問が残ることは承知しています。
意図的にこのような形にしたのは、ここで私が話したことについて、あなたに考えて欲しいからです。
自分自身と世界の中にある分断を認識し始めてほしいのです。
自分自身と世界における、現在の状態の意味について考えてみてください。
なぜなら、この断片化という現象は世界的な病なのですから。
(翻訳ここまで)
いかがでしたでしょうか?
今回の記事を読むと、誰もがトラウマを持っていて、誰もがいくつもの側面を持っていることが分かると思います。
そして、誰もが自身の中に正反対の側面を持っていて、ぶつかり合い葛藤を生み出していることが理解できるかと思います。
この記事はそれらの人類の普遍的な悩みとも言える部分を癒していくきっかけになると思うので、ぜひブックマークして何度も読み返してみてください。
ティールの書籍では、さらに深い話や具体的な癒しのテクニックなどが解説されていておすすめです。
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