サハラ砂漠のオアシスで共同生活する話12(放浪記400)

 

Mくんの流れ

 

ドイツ人の若者Mくんは、変化の時を過ごしていた。


彼は思うところがあり、ドイツを飛び出してモロッコへとやって来た。


旅人には準備万端に貯金をして、装備をしっかりと整えた上で、満を辞して旅に出るYくんのような人が一般的だ。

だがMくんは全く逆で、ただ思いのままに旅に飛び出して、流れに乗って生きようとしていた。

 

それはドイツ的な計画性という個性に反旗を翻しているような生き方だった。

彼の場合は、だらしがなくて無為に放浪しているというよりは、意図的に自分の人生の限界を試しているようだった。

 

 

無銭旅行

 

彼にとっての限界を試す方法は、お金がなくなっても旅を続けることだった。

言ってみればOちゃんの初心者バージョンのようなものだ。

 

彼が自身で学んだ処世術は気楽に考えることだった。

まさしく、重々しく考えすぎるドイツ人の反対側に位置しようとしている。

 

フェスティバルでは、Oちゃんと同じくボランティアで入り、フェスティバルが終わった後はガンドルフさんに招待されてオアシスでの共同生活へとやってきた。

しっかりと面白い流れに乗っているのである。

 

 

開花

 

そんなMくんの理想や流れは、この共同生活に出会うことで花開き始めていた。

Oちゃんという放浪の師匠に出会ったことも大きいだろうし、ガンドルフさんの大きな器が彼を花開かせたとも言えるだろう。

 

Mくんは元々は比較的大人しいドイツ人的なエンジニアタイプの性格だったが、どんどんと自由に弾けていき、彼自身の持つ明るい側面を勢いよく加速させていた。

 

その勢いは彼の会話にも現れていて、元々それなりに話せる英語力が、みるみるうちに自分の母国語のように話し始めていた。

 

 
 
 
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