サハラ砂漠のオアシスで共同生活する話13(放浪記401)

 

ビザ

 

Mくんの勢いは”いまここ”という瞬間に集約しており、日々を最大に生きることに注がれていた。

それは、逆にいうと長期的な予定を無視しているということにもつながる。

 

彼の場合は、それがビザ切れという形で現れて来ていた。

 

モロッコのビザは三ヶ月あり、ほとんどの旅人にとっては十分な期間なのだが、Mくんにとっては充分ではなかった。

オアシスへやって来た段階で既にビザの期限ギリギリだったが、どうにかしようというような気配は全くなく、あっという間にビザが切れてしまった。

 

Mくん的には、”それで?。。。”というようなもので、全く問題の範疇にすら入っていないようだった。

本人が気にしていない以上は、他人が気にするようなものではなく、僕たちはMくんの流れを信頼して任せていた。

 

ビザが切れてからは、さらに色々と吹っ切れたらしく、Mくんはより一層自由に輝きを増していった。

 

 

満月

 

砂漠で暮らし始めてしばらく経った頃に満月の夜がやってきた。

 

ガンドルフさんは、この日のためにパーティーを開くことを前もって準備していたらしい。

僕は当日になって知らされたのだが、こちらとしてはどんなパーティーでもいつでも歓迎だ。

 

このタイミングでやって来たのが年季の入った旅人ミュージシャンのDさんとEさんだ。

僕もIちゃんも彼らの大ファンなので、突然の訪問に大喜びだ。

 

僕たちは嬉しいのだが、Dさんとはあまりにもオーラが違いすぎて、あまり気楽に仲良くしたりもしづらかった。

 

ただ、そばにいるだけで嬉しいというような乙女のような心境で、満月を共に過ごすことを喜んだ。

 
 
完全版へつづく。。。
 

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