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北アルプスの山小屋で働く話22(自叙伝463)

 

プロ意識

 

Jさんのプロ意識は徹底していた。

それは料理人として本気で修行してきたことも関わっているし、彼本人の美意識からも来ていたようだ。

 

その美意識は山小屋の運営にも活かされていた。

 

一般的には山小屋というと厳しい自然環境にあり、粗野で質素な宿泊施設を想像されるが、うちの山小屋は違っていた。

 

夕食の前には食前酒として白ワインが注がれ、支配人のJさんの軽快なトークとともに夕食が始まる。

 

その食事は質素な山小屋というイメージとはほど遠く、フレンチのフルコース並のものが提供される。

 

だが、標高2800メートルの山頂近くでフレンチのフルコースを提供するのは並大抵の努力ではない。

その部分をJさんのプロ意識で補うのだ。

 

 

営業努力

 

食料の荷上げが2週間に一度の山小屋では、新鮮な食材を登山客に提供するにも限度がある。

また、限られた予算の中でやりくりしないといけない。

 

だから、冷凍食品を巧みに使い、料理の裏技を使うことで、食事の質を上げていた。

全ての食材に目を通し、厳選することで最高のものを作り上げる。

 

それこそがJさんの目指す「限られた環境下で最高のものを作ってこそ最高の料理人と言える」という彼の信条を体現していた。

 

こういった営業努力の故にこの山小屋は登山客たちの間で噂になり、客が客を呼び、リピーターが増え、毎年登ってくる登山客が大勢いた。

 

 

好循環

 

この山小屋のイメージが大幅にアップしたことで、系列小屋全体のイメージがアップした。

そうしたことで、この山小屋は系列小屋のイメージ戦略のトップに躍り出た。

 

経営マニアの社長は、経営戦略としてこの小屋により多くの予算を出すようになり、食事の質がさらに上がっていった。

 

登山客はこの小屋に泊まることに憧れ、働きに来る人たちはこの小屋で働くことを夢見た。

 

そんな場所に人事の都合上でポンと採用された僕はかなり運が良かったのだろう。

 

 
 
 

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