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モロッコで21世紀を迎える話30(放浪記373)

 

ラマダーン

 

つい先日にクリスマスを超えたところだが、イスラム教徒の国であるモロッコでは、クリスマスには何の意味もない。

彼らにとって重要なのは、一ヶ月ほど前から始まった長期断食の儀式だ。

 

国によって断食の厳しさ具合は違うらしいが、ここモロッコでは比較的緩く、断食といっても全く食べないわけではなく、日が暮れてから日が昇るまではいくらでも食べて良い。

僕の感覚からすると、断食というよりも夜食の偏食といった風情だが、彼らにとっては重要な宗教的儀式だ。

 

僕たちも、郷にいれば郷に従えの格言通りに、ラマダーンの真似事をしていた。

それは、昼過ぎまでダラダラと寝ていて、夕方までの2、3時間は何も食べない。

 

日が暮れてから朝食を食べて、夜遅くに昼食を食べて、深夜に夕食を食べるという、だらけた生活スタイルだった。

だが、建前上ラマダーンを守っているので、何となく喜んでいた。

 

 

ラマダーンの奇跡

 

僕たちにとってのラマダーンはただのツーリストの遊びだったが、この街で日常生活を送る人たちにはシリアスなものだ。

炎天下の中、飲まず食わずで肉体労働をしている人にはかなりキツいものがあると思う。

そんな彼らを潤すかのような奇跡がラマダーンの最終日に起こった。

 

僕たちの滞在している街は、サハラ砂漠の入り口に位置しており、実質的にはサハラ砂漠の気候だ。

つまり、常に雲ひとつない晴天でカラッカラに乾燥している。

雲を見ることもなければ、雨が降るなんてありえない話だ。

そんな状況下で奇跡が起こった。

 

なんと、この砂漠の街に雨が降ってきたのである。

 

ホテルの屋上から街を見下ろすと、街の住人皆が通りに飛び出してきて歓声をあげながら踊っている。

それは、ラマダーンを成し遂げたものたちへの祝福でもあり、厳しく乾燥した砂漠への天からのめぐみでもあった。

 

ホテルのマネージャーに話を聞いてみると、雨が降るのは4年ぶりのことらしい。

 

オリンピックと同じ頻度で雨が降る。

それを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれだろうが、4年に一度のイベントとラマダーンの最終日が重なったタイミングで人々の喜びを見れたことに対して、宇宙に感謝する気持ちになった。

 

 
 
 
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