北アルプスの山小屋で働く話44(放浪記484)

 

回答

 

Iちゃんと会話をすることすら難しかったが、何とか機会を見つけて何が彼女の中で起こっているのか問いただすことができた。

 

その回答は、”時が来れば話す”というものだった。

 

僕としては全く納得がいかないが、待てと言われれば待たざるを得ない。

不満を感じたまま山小屋バイトの残りの日々を過ごすことになった。

 

 

地獄

 

付き合い始めてから2年、世界を共に旅して苦楽を共にした相方が、同じ職場にいるのに、仲良くするどころか、まともに会話をすることすらできず、目を合わせることすらできない。

その上、その理由は説明されず、宙ぶらりんのままだ。

 

彼女と仲良くしようとすると、夜叉のような目で睨みつけられる。

僕は混乱し地獄のような苦しみの中にいた。

 

救いとなったのは、他の従業員たちだった。

仕事は忙しかったが、大勢の人と仕事をするのは楽しく、色々な学びがあった。

 

 

終了

 

そのような混乱と苦しみの日々にも終わりの時がやってきた。

この大きな小屋を完全に閉める時が来たのだ。

 

小屋閉めの作業は徐々に行っていたが、以前の小屋と同じく、最後の数日はお客さんは全く居ず、最後の大掃除に入る。

 

この段階で、Iちゃんから会話の誘いが来た。

今までは忙しくて会話できなかったのではなく、Iちゃんが会話したくなかったから忙しさを理由に会話を避けていただけだった。

 

Iちゃん曰く、僕と別々に時間を過ごすことで、独立して生活し、独り立ちした自立の日々を過ごすことになった。

そうすることで、自立した喜びを感じたので、もう恋人同士には戻りたくないということだった。

 

僕と過ごした時間は楽しいことも多かったが、完全な独立心を感じることはできなかった。

これからは、別れて別々に生きていきたいということだった。

 

 
 
 

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