北アルプスの山小屋で働く話45(放浪記485)

 

納得

 

僕はその話を聞いて納得することができた。

 

旅をしている最中にも常々彼女の独立心や自立心に疑問を感じていて、何度か彼女の精神的自立について話し合ったこともあった。

 

別れることは残念だが、彼女が自立し成長した結果として別れるのならば、辛いけれど受け入れることができる。

 

なぜこんなにも冷たくされたのかは理解できないが、それでも納得することはできる。

今までどうもありがとう。

 

 

下山

 

大きな小屋の小屋閉めが完了し、下山の時が来た。

 

山小屋バイトの終了とともに、Iちゃんとの関係も終了した。

とても辛いが、彼女のためを思うと納得して送り出すことができる。

 

お互いに信頼しあった関係を築き、愛とともに別れることができるのは光栄の至りだ。

僕は突然の心理的変化を受け入れながら山を降りていった。

 

 

打ち上げ

 

大きな小屋を閉めたことで、系列の小屋も全て終了し、今シーズンの山仕事が全て終了した。

 

全ての締めとして大きな温泉旅館に系列の小屋の従業員や、事務所の人たちや、関係する業者の人たち全てが集まって大きな宴会が開かれた。

 

この宴会への道中に、またIちゃんに呼び止められた。

話があるという。

 

僕たちは道から少し逸れたところで会話を始めた。

Iちゃんは話を切り出しにくそうにしながらも思い切った感じで話を始めた。

 

Iちゃん曰く、好きな人が出来たという。

 

は、???。。。。

 

僕は言葉が出なかった。

 

えっ? なになに? 自立したいから別れたんじゃなかったの?

 

自立して自分自身の人生を歩みたいというから、僕も納得して別れることができた。

受け入れるのは簡単ではなかったが、彼女のことを思えばこそ受け入れるべきだと、無理矢理に自分を納得させた。

 

でも、好きな人ができたとかいうなら話は全然変わってくる。

そもそも自立したいという話はなんだったのか?

 

しばらく離れて暮らしていれば好きな人ができることもあるだろう。

それは受け入れられる。

 

だが、肝心のことを話さずに別の理由で別れるというのはなんなのか?

 

僕は混乱を極めた。

 

 
 
 

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