放浪記026

人生初の普通っぽい暮らしの話2(放浪記026)

サブカルチャーへの傾向

 
 
 
ピザ屋でバイトしていたころの生活は、かなり単調なものだった。
 
 
 
実家から自転車で7分のところにあるピザ屋で1日8時間バイトして家に帰るだけの日々。
 
それ以外の時間は本屋で立ち読みしたり、映画やテレビを見たりゲームをしたりなど。
 
ピザ屋以外では友達は一人もおらず、暇つぶし以外のなんら建設的なことはしていなかった。
 
 
 
そんな立ち読みの日々に出会った本で、『クイック・ジャパン』という現在まで25年も続いているサブカルチャーの雑誌がある。
 
 
 
いつも立ち読みをしている本屋で創刊号を見かけて表紙が気になり手に取ったのがきっかけなのだが、この雑誌で紹介する『サブカルチャー』という分野にすごく興味を引かれた。
 
 
 
マスメディアに出て来ないような、アングラ文化を面白い視点で紹介していて、今までに見たことも聞いたこともないような、マイナーで刺激的な情報で世界観が広がったような気がした。
 
 
 
紹介される情報のマイナーさや捩れ具合が自分の状況と被さり、妙な親近感を感じていた。
 
 
 
自分の住む世界に出会ったような感じ。
 
 
 
 
 
 
 

詩人魚武

 
 
 
この本を通して知った人の一人が、三代目魚武 濱田成夫という詩人だ。
 
後に大塚寧々と結婚して離婚した人と言う方が、知られているかも知れない。
 
 
 
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彼は、とにかくカッコよく生き抜くことだけを目指し、自分を褒めたたえる詩しか作らない詩人。
 
生き様という芸術を表現している。
 
 
 
僕は彼の常識から飛び出しまくったロックな価値観に衝撃を受けて、一気にファンになった。
 
 
 
彼の詩集や自伝などを読んで、自立した価値観や、強力な自己肯定意識などに憧れた。
 
 
 
色々な影響を受けたんだけど、一番大きかった影響は、
 
”人生で何か大きなことを成し遂げたいなら、二十歳までに行動を起こせ”
 
という言葉から。
 
 
 
この言葉は17歳で自分の育った枠組みから脱出した多感な僕にとって、大きく響いた。
 
 
 
自分の高校中退という選択を、後押しされているような感覚。
 
 
 
 
 
 
 
 

兄との出会い

 
 
 
魚武のことを知って半年くらい経ったある日、兄夫婦が夕飯に招待してくれた。
 
家で食事してビデオでも見ようかって予定。
 
 
 
兄とは3歳から分かれて暮らしていて、会うのは1年に1度ほどだけ。
 
ここ数年は、ビデオを借りるために週1で会っていたが、兄と弟という役割での付き合いだった。
 
 
 
月に一度、映画に連れて行ってもらったりしていたが、家に直接遊びに行くことはあまりなかった。
 
この時も1年ぶりくらいに遊びに行ったように思う。
 
 
 
兄の家に入って最初に気になったのが、壁にかけられていた額縁。
 
習字の文字のようなものが、書かれているので読んでみる。
 
 
 
それはなんと、僕の大好きな『魚武の詩』だった!!!
 
 
 
まさか、こんなにマイナーな詩人を知っている人が知り合いにいるなんて想像もしていなかったし、ましてやそれが実の兄で、しかも大ファンで壁に飾っているなど到底ありえない話だった。
 
 
 
もちろん兄(24歳)も17歳のガキンチョの僕が『魚武』を知ってるなんて思いもしないので、びっくりして大喜び。
 
大好きな詩人の話で一気に意気投合した。
 
 
 
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実は兄も人知れずサブカルチャーが好きで、クイックジャパンなども購入していた。
 
 
 
話はどんどんと盛り上がり、帰るときには紙袋いっぱいの漫画本を渡された。
 
兄のオススメの漫画の数々で、サブカルオタクの世界に入って来いという勧誘だった。
 
 
 
その日の夕食は、14年間離れて暮らしていた兄との『邂逅の日』になった。
 
 
 
この事件をきっかけに兄との関係は育ちは違うけれども、血の繋がった兄弟というものから、育ちは違うけれども似たセンスを持つ血の繋がった親友に変わり始める。
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 

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