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ゴアに目覚める話18(自叙伝135)

 

ダウン症

 

僕たちは料理の美味しさに引き寄せられていたのはもちろんだが、その家庭的な雰囲気もまた魅力だった。

お父さんがシェフでお母さんがサポート、しっかり者の次男(当時9歳)が家に居るときは、彼が注文を聞きに来た。

 

長男のA君はダウン症で、明るい場所で自由に育ったからか、日が照っているという意味の名前だからかは知らないが、底抜けに明るかった。

とにかく常に幸せいっぱいで、僕たちが来ると喜んでやってきてハローハローと笑顔を振りまいてくれる。

 

彼は結構重度なダウン症だと思うのだが、完全に感覚の世界に住んでいて、社会的な行動はほとんど何も出来ない。

他の国だと施設とかに入れられてしまうのかも知れないが、ここでは国の保証が無い代わりに、A君は全く自由に暮らすことが出来ていた。

 

彼はこのレストランのマスコットキャラのようになっており、来る客の多くが彼に会う事を楽しみにしている。

彼の自由で明るい育ちが、見ていて心地が良いのだろう。

 

 

感覚の世界への旅

 

だがその自由さの反面、色々ととんでもない事をしでかしたりもする。

 

ゴアでは、レストランでボブ・マーリィの曲を流していると客の入りが良いと言うジンクスがあり、ここでは常にボブ・マーリィのベストアルバムを繰り返し流していた。

 

その中にはバッファロー・ソルジャーと言う曲があるのだけど、その曲のはじめにタタタンと言うレゲエ特有の聴き手を引き込む魔法のような音がある。

 

 

このタタタンと言う音が、感覚の世界に生きているA君を音楽の世界に引き込む魔法のような引き金の役目をしている。

タタタンという音が鳴り響いた瞬間、彼は後ろにのけぞり、曲が始まると同時に前のめりに倒れ、ギターが奏でるビートに合わせて前後にゆっくりと激しく揺れる。

 

僕たちはこれを神懸りと呼んでいて、この状態になったA君は手がつけられなくなる。

 

音楽の世界にとらわれて前後の見境が無くなった彼は、心のままにレストラン無いをさまよい続ける。

 

外に出ていき、スピーカーからある程度の距離を取ると、落ち着いていき、他のことに興味を持つことで目を覚ます。


その心のままに向かう先が食事中の客のテーブルと言うこともあり、多大な迷惑を及ぼす事もある。

 

家族が近くにいるときは慌てて飛び出て来てA君を押さえ込むのだが、誰もいない時には僕たち常連客がA君を抑え込む役を担う。

 

こういった不思議な光景が受け入れられるところが、僕たちがこのレストランを居心地が良く感じた理由の一つでもある。

 

 

待ち時間

 

料理の量が多くて手頃な値段、新鮮な食材で美味しく、僕たちはしょっちゅうたむろしていた。

 

たむろしていた理由は料理が美味しくて居心地が良いだけでは無く、その大きな理由はあまりにも長い待ち時間にあった。

シェフの料理の腕は間違いなくピカイチなのだが、前準備があまり得意でなく、料理が出来るまでの待ち時間が尋常では無かった。

 

一時間くらい待つのは普通で2時間3時間待たされることも稀ではなかった。

それが5人とかで行くと優に4時間とかかかったりする。

 

そこに街への買い物も合わさると、料理が出てくるまでにかなりの時間を待つことになる。

 

 

大富豪

 

僕たちはただ待っているのでは無く、常にトランプを持ち歩いており、大富豪をして遊んだ。

チャイを飲んだりシェイクを飲んだり、お菓子を食べながらトランプを楽しんだ。

 

僕たちは、唯ひたすら大富豪のみをして遊び続けた。

他のゲームをした記憶は一切無い。

飽きずに遊び続けられることが大富豪というゲームの凄さなんだろう。

 

何時間もトランプをして過ごすことはある意味、時間の無駄のように思えるかも知れない。

だが、こういったゲームを通して感情のアップダウンを共有した友達とは心の距離が近くなり、友情を育むと言う点においてトランプは最高の道具になる。

 

僕たちにとっては友情は何よりも大事なものだった。

 
 
 

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