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日本へ向かう話1(放浪記436)

 

日本帰国

 

帰国の飛行機は何の問題もなく、関空へと辿り着いた。

 

1年7ヶ月ぶりに帰ってきた日本はどことなく違和感があった。

 

見慣れた感覚と懐かしい感じがすると同時に、自分はもうそこには属していないという部外者の疎外感を感じていた。

 

自分が旅を通して体験したことはあまりにも異次元すぎていて、感覚を共有することができない。

そんな違和感や疎外感を感じていたので、単純に帰国が嬉しいという感覚はなかったが、それでも久しぶりの日本は刺激的に感じられた。

 

 

実家へ

 

電車を乗り継いで母の住む実家へと向かう。

家は関空から近いので、1、2時間もすれば実家へと辿り着いた。

 

久しぶりの母との再会は懐かしくもあるし、お互いに狭いスペースで共同生活する必要があることに対して少しの緊張感があった。

 

本来ならば、母と祖父が家にいるはずなのだが、祖父は現在病院に入院している。

 

祖父が亡くなる前に顔を見せようというのが、今回の帰国の主な目的だ。

 

祖父の容体は今のところ大丈夫だが、またいつ悪化するかもわからないので、病院に入院したままだという。

 

入院の原因はガンだが、79歳の老体には病因などはあまり関係ないだろう。

年老いた故の不調だ。

 

 

祖父

 

いつ祖父の病体が変化するかもわからないので、早速次の日には病院に向かうことにした。

とりあえず顔を見たい。

 

近所にある大きな病院へと祖父のお見舞いに向かう。

 

医者の診断がガンだということは祖父には伝えていないらしい。

僕個人としてはこう言ったところで嘘をつくということが好きではなかったが、祖父の面倒を見ているのは母と叔母なので、僕に文句を言う権利などなかった。

 

久しぶりに会った祖父は痩せ細っており、死の匂いを感じさせた。

誰が見てもそう長くはないだろうと言うのが、直感でわかる。

 

建前上は誰もがもうすぐ良くなるよ、などと言うが、誰もがもうじきお迎えがあることを感じ取っている。

おそらく祖父自身も理解していただろう。

 

だが、祖父ももうすぐ良くなると言う建前のドラマを一緒になって演じていた。

そうすることで、家族間の動きがスムーズになるのだろう。

 

 
 
 

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