日本へ向かう話4(放浪記439)

 

ガストでの驚き

 

ガストのバイトで驚いたことは他にもある。

 

ある日、たまたま店長が管理している商品原価の書類を目にすることがあった。

店長は毎日、原価と睨めっこして売り上げを増やそうと努力している。

 

その書類を覗き見たところ、あまりにもの原価の安さに度肝を抜かれた。

千円以上で売っているステーキの原価が230円ほどだったのだ。

 

高級食品のイメージの牛肉のステーキがたったの230円。

もちろんそこにバイトの給料や店舗の家賃などが重なるので、結果的にはもっとするのだろうが、あまりにも大きな原価との差額に衝撃を受けた。

 

さらに驚いたのは、1000円以上で売っている牛肉のステーキよりも、900円ほどで売っている鶏肉のステーキの方が原価が高かったのだ。

原価が高いから販売価格も高いのではなかった。

 

資本主義の世界での経営としては当然のことなのかもしれないが、そんなことなど考えたこともなかった僕には、商品の原価には驚かされた。

 

 

店長

 

大阪の中心地近くにあったバイト先は、ある意味で荒んでいるようなところもあった。

誰もあまり真面目には仕事をしていず、如何に楽をして適当に時間を過ごすかに集中しているように見えた。

 

店長は既婚者なのだが、仕事の合間に抜け出して不倫相手との密会を重ねているようだった。

それはバイトたちの間で公認の秘密のようになっており、裏では店長の行動をヒソヒソと話し合っていた。

 

以前ピザ屋でバイトした時は、周囲と同調し仲良く過ごすことができたが、ここでは僕は浮いた存在だった。

誰とも友達にはなれず、自分自身のことも旅の話も公にすることはなかった。

 

僕は初春なのに真っ黒に日焼けした長髪の無口で変な若者だった。

 

モロッコでの砂漠の日々を思いだし、イスラム教徒の正直さや誠実さを懐かしく感じながらバイトの日々を過ごした。

 

 
 
 

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