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日本へ向かう話5(放浪記440)

 

Iちゃんの公演

 

僕がチェーンレストランでうだつの上がらない日々を過ごしている間、恋人のIちゃんは日々劇団の練習に励み、輝きを増していた。

 

特に公演まえの1週間は、練習の激しさを増し、忙しく日々を過ごしていた。

僕は今までにそういった集団行動や、練習に励むなどといった経験がなかったので、何となく羨ましく見えた。

 

彼女の練習の日々は続き、一ヶ月経った頃には待ちに待った公演が行われた。

 

大阪市内にある劇場へと足を運び、客席に座る。

 

Iちゃんには公演が終わるまでは楽屋に来ないように言われている。

感動を温存しておきたいようだ。

 

 

演技

 

舞台が暗転し、公演が始まる。

 

申し訳ないが、今となってはどんな話だったのかは、はっきりとは覚えていない。

 

人間の内面を色々な演出テクニックを使って描いた、少しマニアックで実験的な内容だったように思う。

 

彼女の演技には熱がこもっていて、他の役者さんたちよりも存在感があった。

自分のガールフレンドだから贔屓目にみていたのかもしれないが、素晴らしいものがあった。

 

Iちゃんは自分の女優としての才能に自信があるらしく、以前にはダンスするときに控えめに抑えて踊らないと他の役者さんの存在感が消えてしまうと言う話をしていたが、彼女の演技を見て納得するものがあった。

 

舞台での彼女は、たっぷりと盛った厚化粧で、濃いめの顔がさらに際立っていた。

役柄に感情移入し、役柄の立場に立って物事を表現する。

 

僕の中にはそのような才能はないので、Iちゃんが才能を発揮しているのを見て、感動させられた。

 

旅の世界での彼女とは全く違う一面を見て、何か緊張するような別世界にいったような感覚に陥る。

 

舞台は、感動的な女性ボーカルが流れる中、幕を閉じ、盛大な拍手の中で公演を終えた。

 

Iちゃんはこの後も忙しいらしく、軽く挨拶だけして家路に着いたが、全く未知の世界の未知の体験と、今までに見たことのない彼女の姿に呆けにとられたような感じで家路に着くことになった。

 
 
 

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