ゴアに出会う話19(放浪記116)

サンダル

 
 
 
 
兄たちがきて早々、近々地元の人と結婚予定のカラングートビーチに住む日本人女性Kさんが、僕たち全員を食事に誘ってくれた。
 
 
日本からはるばる来た兄たちに、地元のゴア料理をご馳走したいというありがたい提案。
 
 
 
 
 
皆でタクシーに乗り、彼女たちの家へ向かう。
 
 
 
 
 
僕たちは、美味しいゴア料理をご馳走になり、色々な話をして楽しく時間を過ごした。
 
 
 
 
 
さて、自分たちの住むアンジュナに帰ろうかと言うときに気づいたのが、兄のサンダルが失くなっていたという事。
 
 
このサンダルは、スニーカーのコレクションが100足以上あるスニーカーマニアの兄が、この旅行のために用意した珍しいデザインの物。
 
 
インドで目にする事はまず無い代物だ。
 
 
 
 
 
インド的な感覚でいうと、そんな変わったサンダルを履いているのが悪いと言うことになるし、人目につくところに置いていることが悪いとなるが、兄たちに楽しい思いをさせたい僕たちにとっては、なかなか気分が悪い。
 
 
人が通らない路地の奥の林の中の家なだけに、近しい人を疑ってしまうのが悲しい。
 
 
誰かが売るために持って行ったんだと思うが、誰にも文句の言い様が無いので、その日はKさんのサンダルを借りて帰った。
 
 
 
 
 
 
 
 

盗み

 
 
 
 
 
インドではこういうちょっとした盗みがしょっちゅう有り、事あるごとに気分が落ちる。
 
 
 
 
 
 
インドにおいての盗みの感覚は日本とは大きく違っていて、盗む方が悪いと言うよりも、盗まれる方が悪いと言う感覚が強い。
 
 
ものすごい善意に満ちた人達であると同時に、悪事に対する感覚が日本とは大きく違っている。
 
 
 
 
 
兄たちのたった10日間のインド滞在の初っ端でこんな事が起こるのが残念だったが、兄はインドに対して怖いイメージを抱いていたので、荷物が全部盗まれるくらいは覚悟の上でインドに来ていたので、そこまで気にしてはいないようだった。
 
 
僕たちは海で泳ぎ、マーケットで買い物をし、美味しいレストランで食事をして、ゴアの日々を満喫した。
 
 
 
 
マーケットで買い物をする時には僕が英語で値段交渉をして、出来るだけ安く買えるように助けた。
 
 
些細なことだが、世話になりっぱなしだった兄の役に立てるのが嬉しい。
 
 
 
 
 
兄と一緒に遊んでいて最高にありがたいのは、兄が全部奢ってくれたことだ。
 
 
兄は7つ年下の僕に対して兄という立場を常に固く守っていて、常に全部奢ってくれる。
 
 
 
 
 
お金がない時は、お金がないということを説明してくれて、安いものを奢ってくれる。
 
 
決して僕に半額出せというようなことはなく、問答無用で全ておごってくれる。
 
 
 
 
 
ふざけた話だが、当時の僕はどこへ行っても常に最年少で、奢ってもらって当然だと考えていた。
 
 
子供が大人の世界へ入る時の考え方だ。
 
 
 
 
 
 
Yさんには、”お前は子供の特権を使うくせに大人と同じ権利を要求する”と度々文句を言われていた。
 
 
だがこういった兄の漢気は、無意識のうちに僕に影響を与えていて、その後何年も経った頃には、人に奢るという行為が自然にできるようになった。
 
 
 
 
 
 
十日間の滞在中兄達は余すところなく楽しみぬいた。
 
 
僕はまさか自分が英語も話せないのに、インドの観光ガイドをするなんて思ってもいなかったが、兄達のようにインドを全く未経験の人たちと比べると、いかに自分が頼りがいがあるかということに気づき、大きな自信になった。
 
 
 
 
 
 
兄達の帰国の日、二人を空港まで送る。
 
 
サンダルを盗まれた以外は何の被害も事故も怪我もなく、安全に日本に送り返せたことが嬉しかった。
 
 
 
 
 
手紙を書いてインドへ招待するというインスピレーションは間違えていなかったようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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