イギリスへ向かう話2(放浪記435)

 

大転換

 

僕がロンドンについて1週間もしない頃に、大転換が訪れた。

 日本からパソコンが届き、部屋と仕事を探し始めようかという頃だ。

 

祖父が緊急入院したというメールが母から届いたのだ。

母の父であり、僕が実家を出るまでは一緒に暮らしていた祖父だ。

 

体調を崩して入院しており、そう長くはないという話だ。

 

 

判断

 

僕の決断は早かった。

 

ロンドンについたところで、全くの白紙の状態だったので、日本に帰国することに対してなんの問題もなかった。

むしろ暮らしを積み上げた上で帰国するよりも簡単だと考えた。

 

それに、いつ祖父が他界するかも分からない。

決断は早い方がよかった。

 

僕が考えていたのは、祖父の容態のことだったが、Iちゃんとの恋愛関係のことも頭にあった。

別れた直後に祖父の状況により、緊急帰国する状況になるのは、何か運命的な意味があると考えたのだ。

 

もし、この母からの通知が1週間遅れていたら、僕は既にロンドンに部屋を借りていて、全く違った人生を歩むことになったかもしれない。

人生とはこういった「もし」の連続で成り立っているのだろう。

 

 

緊急帰国

 

この時点では、またロンドンに帰ってくることも視野に入れることができたが、僕はロンドンから一度撤退する方向を選んだ。

 

今となってはなぜロンドンが今後の視野から消えることになったのかは覚えていないが、結局のところロンドンでの暮らしに興味を持っていなかったのだと思う。

モロッコで自然に密着した暮らしをしたことで、自然と共存したいという思いが強くなっていた。

 

母からのメールを受け取った数日後には、日本へ向かうチケットを取っていた。

日本に戻るつもりは全くなかったが、いざチケットを取ってみると、深く納得するものがある。

 

前回の日本滞在はあまり楽なものではなかったので、少しの緊張があった。

今回もあまり楽なものでは無いだろうが、祖父の緊急事態という強力な理由づけが、日本帰国に対する緊張を受け入れさせていた。

 

ロンドンへ戻ってこないという選択をしたことで、Nちゃんに預かってもらっていた自転車やいくつかあった家財道具を処分することにした。

 

自転車は出国直前まで処分することができなかったが、最終日に人通りの多い駅前に行き、値段を書いた紙を貼って突っ立っていると15分ほどで買い手がついた。

 

ほぼ文無しの状態で日本に帰るので、少しでも現金を持っておきたかったということもあり、最後に少しでも現金を手にして帰国できるのはありがたかった。

 

 
 
 

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