自転車で沖縄へ向かう話2(放浪記496)

 

旅の始まり

 


次の日、朝早くに友人宅を出た。


姫路から大阪の母の家まで8時間かけて自転車で向かうのだ。


もちろん、再び電車に乗って実家へと帰るという選択肢もあったが、これから沖縄まで自転車で向かおうとしている人間が、この程度の距離で怖気付いていては話にならない。

将来的にはアフリカ大陸すら視野に入れた自転車の旅なのである。


自転車は、さすがに15万円するだけあって、驚くほどのスピードでこぎ進めることができた。

今までに乗っていた自転車は何だったのかと思うような質の違いである。

このレベルの自転車ならば、沖縄へ行くことも不可能ではないと自信を持つことができた。


平地での移動だったこともあり、驚くほど簡単に大阪の実家まで辿り着くことができた。

山小屋での過酷な肉体労働の日々を思えば、大したことのない冒険だった。

 

 

プチ成金

 


僕は自転車を手に入れたことで、本格的に旅の準備に勤しんだ。

山小屋で貯金したお金は80万円ほどあり、そのような大金を手にしたのは生まれて初めてのことだったので、大判振る舞いで旅道具を買い揃えた。

プチ成金の心情である。


今まで、最低限の装備でカツカツで旅を続けてきた反動と、モロッコで出会ったY君に教えてもらった山道具の素晴らしさへの興味が重なって、最高の旅道具を買い漁った。


プチ成金の心情は、僕に5万5千円のレインジャケットと、4万円のテントを買わせた。

今になって思うと、その3分の1の価格でも同程度の製品を手に入れることができると知っているが、プチ成金の心情は最高級品を買うというエゴを求めていた。


結局のところ、80万円の貯金のうち30万円を旅道具へと出費することになった。


その価格が適正なものだったかはともかく、僕の満足度と旅への自信は最高度に達していた。


山暮らしで鍛えられた肉体と、山小屋で学んだ知識と経験、そして最高級のキャンプ装備と自転車さえあれば、どんな状況でも旅を続けられると感じた。

 


つづく。。。

 

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