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北アルプスの山小屋で働く話10(放浪記451)

 

社長

 

その山人の個性の代表格とも言えるのが、山小屋の代表でもある社長だった。

 

以前の記事では、この3代目社長が経営の神様の信奉者になってしまい極端な経営理念を従業員に押し付けている、と言う話を書いた。

この経営理念は従業員からするとたまったものではないか、いろいろな方向へ良い効果をもたらしていた。

 

社長は経営理念を信じきることで迷いが吹っ切れて、自分の方向を迷わずに突き進んでいた。

 

 

お山の大将

 

実質的に独立した会社の社長であり、その会社の本体は山の頂上にあると言う文字通りの「お山の大将」を地で行くようなものがあった。

 

この山小屋内においては、社長は王様であり大統領であり独裁政権の大佐でもあった。

 

必ずしも従業員から好かれていたわけではないが、社長本人もあえて嫌われ者の役を選んでいたようだ。

それは社長の信奉する経営の神様のやり方でもあり、会社の運営上仕方のないことでもあったのだろう。

 

その嫌われ者としてやっていくと言う覚悟が、彼の個性をさらにいっそう際立たせていた。

 

その覚悟ゆえに人からどう思われようと気にしない図太さを持ち合わせていて、端から見るとヤバい人に思われてしまうようなことが度々見られた。

 

 

奇行

 

ここでは長年働く従業員たちの間で伝説となっている話を1つ紹介したい。

 

この山は標高が3000メートルに近く、そんなに気軽に登山できるような山ではない。

だが登山客が来なければ山小屋商売は上がったりである。

 

社長は、その問題を解決するための投資として、登山道の整備に力を入れていた。

優秀な経営戦略としての登山道整備は見事に成功した。

 

さらには広告や宣伝その他様々な戦略を組み合わせることで、この山は初心者でも登りやすい山として定着するようになった。

 

登山道が歩きやすくなったからといって、標高が下がるわけではないし荷物が軽くなるわけでもない。

特に登山初心者の年配の登山客にとっては、かなり大きなチャレンジだ。

 
 
 

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