包丁の研ぎ方
Jさんは本当に基礎の基礎から教えてくれた。
役に立つ知識なのでいくつか紹介したい。
まず最初に教えてくれたのは、包丁の研ぎ方だった。
僕は、包丁を研ぐなどという考えすらなかったので、非常に役に立つ知識だった。
まずは研ぎ石をしっかりと水で濡らし、砥石の下には濡れた布巾をおいて滑らないようにする。
その状態で、十円玉一枚程度の隙間を空けて、包丁を刃の側から背のがわへ砥石に擦り付けることで、綺麗に研げる。
包丁が十分に遂げているかどうかは、刃の部分を指で横向きに触ることでわかる。
ザラザラした感じがあるのだ。
持ち方
包丁が研げた後に教えてくれたのは包丁の持ち方だった。
持ち方を意識して包丁を持ったことなどなかったので、ここでも驚かされた。
色々な流派の持ち方があるらしいのだが、初心者向けとして紹介されたのが、人差し指を包丁の背に乗せて、残り4本の指で柄を握るという方法だ。
この方法だと包丁の方向性をしっかりと定めることができつつ、力も入れやすいのだという。
正しい持ち方を教わった後は、まな板との対峙の仕方だった。
プロとして長時間料理と向き合うためには、疲れてはいけない。
そのためには切るときの姿勢や、テーブルの高さまでを考慮する必要があった。
僕は背が高いので、平均的なテーブルは少し低く感じる。
そういう時には、股を開くことで体の重心が下がり、快適に作業できるようになる。
姿勢をまっすぐに伸ばし、無理なく力を入れることが出来る。
切り方
切り方にも技術があった。
僕にとっては切るということは、包丁を振り下ろすことだったが、プロにとっては包丁は滑らすものだった。
ただ上から下に下ろすのではなく、手前から遠くへ、あるいはその逆、あるいはその両方を使いこなす必要があった。
僕が学んだのは、初心者向けの手前から遠くへと滑らす切り方だった。
そうすることで、切り口は潰れることなくサッパリと切れており、繊維が新鮮なままなので、味がはっきりして歯応えも良いのだという。