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北アルプスの山小屋で働く話19(自叙伝460)

 

Jさんの経歴

 

彼はその経歴を生かし、最初から料理長として山小屋に就職した。

 

彼は料理家として優れていただけではなく、頭が良くてセンスがあったので、仕事をうまくこなし、社長の信頼を得て一つの山小屋を任されるまでになった。

 

そこへ至るまでには、社長との交渉が色々とあった。

Jさんは彼の才能を最大限に生かすことで、山小屋経営にとって有利になるという理屈で社長を説得し、支配人になることができたようだ。

 

 

小屋の特徴

 

社長の経営する山小屋はいくつかあるのだが、この小さな小屋はJさんの提案により、通好みの最上級の山小屋という売り文句で運営されることになった。

 

Jさんがその才能を駆使して献立を組み立て、極端に限られまくった環境でも最大限に美味しくできるように、あらゆる工夫がなされていた。

 

そういったことを予算内できっちりやるので、社長にも気に入られており、一目置かれていたようだ。

 

 

料理修行

 

僕は非常に運がいいことに、フレンチの真髄をマスターした支配人から直々に、料理の基礎を教えてもらうことになった。

 

18才からひとり暮らしをして料理を作っていたし、旅行中にも自炊することが多かったので、それなりに料理はできたが、料理の基礎など知る由もない。

小学校の家庭科で包丁の使い方を学んだくらいだ。

 

そんな僕にJさんは一つづつ順番に教えてくれた。

一気に教えるのではなく順番にできる範囲で教えてくれたのが本当にありがたい。

 

 

玉ねぎ

 

最初に突きつけられたのは、玉ねぎだった。

 

この玉ねぎの皮を向いてみろという。

玉ねぎの剥き方を見ることで、その人の料理のレベルがわかるのだそうだ。

 

僕は言われるままに自分なりに皮を剥いた。

上下のヘタを切り落とし、茶色い薄皮を剥く。

お世辞にも素早いとは言い難い。

 

次にJさんが手本を見せてくれる。

上のヘタを切り落とした後は、下のヘタに包丁を突き立てて、クルリと回して硬い根っこの部分だけを取り除いた。

そのあとは、玉ねぎ本体に縦に切り込みを入れて、茶色い薄皮とともに玉ねぎの第一層も一緒に剥ぎ取った。

時間にすると一瞬の出来事である。

 

Jさんいわく、これがプロの玉ねぎの剥き方だという。

最小限の時間と手間で、最大限に最上級の部分を手に入れる。

 

そしてその単純な行為をひたすら繰り返すことで、玉ねぎを見ずとも素早く剥くことができるのだという。

 

たかが玉ねぎ、されど玉ねぎと言った体験だった。

 

 
 
 

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