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北アルプスの山小屋で働く話18(自叙伝459)

 

支配人

 

これから僕の直属の上司になる、小さな山小屋の支配人Jさんは、かなり素敵なおじさんだった。

 

大きな小屋にいる時に少しづつ仲良くなっていったが、小さな山小屋に移って24時間一緒に時間を過ごすことで、その人隣が理解できるようになっていった。

 

彼はユーモラスで暖かい心を持ち、中継小屋のMさんとは親友/悪友のような関係だった。

 

山の男といった感じの強さを持ちながらも、繊細な芸術家肌を持ち合わせていた。

どちらかというと根は芸術家で、立場上に強い山男を演じているようだった。

 

 

フレンチ修行

 

彼は元々は生粋の料理人で、長年かけてフランス料理の修行を続けてきていた。

 

かなり有名な最上級のホテルでフレンチの修行を続けた後に、独立して自分のレストランを立ち上げた。

小さな予約制のレストランで、最上級の料理を少人数に提供する、通好みの高級レストランだったらしい。

 

彼は最高の設備と最高の環境でフレンチを極めるべく研鑽の日々を続ける。

 

その傍に趣味の登山で日本各地の山々に登っていたようだ。

 

 

転機

 

そんな料理を極める日々だった彼に転機が訪れる。

彼は、完璧に整った自分の環境に疑問を持ち始めたのだ。

 

最高の環境にいれば最高の料理が作れるのは当たり前だ。

むしろ料理の腕を極めたければ、最低の環境において最高のものを作ることこそが、最大の成長をもたらすのでは?

 

普通はそんなことが頭に浮かんでも、整った環境を捨てて不便な環境に移ろうなどとは思わない。

だが、Jさんは普通ではなかった。

 

彼の芸術家魂と料理人としての修行の欲求が、最も不便な料理環境である山小屋へと導いたのだ。

 

労働時間は倍に増え、給料は3分の1くらいになったことだろう。

だが彼はそんな不便をものともせず、山小屋の世界に飛び込んだ。

 
 
 

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