サハラ砂漠のオアシスで共同生活する話24(放浪記412)

 

旅立ち

 

Mくんのヒッチハイクは無事に進み、1週間もした頃には無事にドイツに着いたと言う連絡がメールを通して伝わってきた。

 

ビザの期限を超過したことは国境で問題になったらしいが、罰金を取ろうにもお金を持っていないので、相手にするだけ時間の無駄だと思われて、そのまま国境を越えることができたらしい。

 

Mくんの旅立ちは僕たち皆にとって輝かしいものだったが、僕とIちゃんにとって旅立ちという話題は重たいものでもあった。

 

このモロッコの旅が終われば、Iちゃんは日本へと帰り、自分の夢である演劇の道へと進むことになっている。

 

僕はまだまだ世界中を旅したいし、日本の都会に住んで何かに打ち込むと言うようなことには興味がなかった。

そのことはしっかりと話し合っていたので、お互いに納得ずみの結論なのだが、別れたいわけでは無いので辛い思いが伴っていた。

 

 

オーバーステイ

 

そんな僕たちのビザがもうすぐ切れるのである。

 

今までの僕たちならビザの切れるタイミングに合わせて飛行機を予約したりしていただろう。

だが、Mくんのモロッコ不法滞在体験が良い刺激になり、僕たちも心に任せた旅をして、ビザの期限が切れても気にしないようにしようと言うことで落ち着いた。

 

それでも、ビザの期限を破ると言うのは今までの旅人の経験からしてタブーのような事項である。

 

できるだけ長く滞在して一緒に過ごしていたいが、だからと言ってお金の限界がなくなるわけではないし、今後の予定が待ってくれるわけでもない。

Iちゃんは劇団の仲間から次のプロジェクトに誘われていて、そう遠く無いうちに練習が始まる。

 

どちらにしろ限界があった。

 

 

アイデア

 

その隙間を埋めるアイデアが、仮病と言うアイデアだった。

 

国境を出るときに、どこかの街で病気になって動くことができなかったと嘘をついて言い逃れする計画を立てた。

そんな感じなら、2週間くらいビザの期限を過ぎてもなんとかなるんじゃないか?

 

一緒にいたいけれども、限界があり、どこかで折り合いをつけなければならない。

だからと言って今すぐ出発するのはあまりにも早急すぎる。

 

そのちょうどいい隙間が2週間のオーバーステイと言うアイデアだった。

 

 
 
 
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