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北アルプスの山小屋で働く話41(放浪記481)

 

歩き方

 

もう一つ教えられてのは、下山時の歩き方だった。

 

山を降りるのは重力に任せて歩を進めるだけなので、簡単だと思われがちだが実は正反対で、ほとんどの事故は下山時に起こっている。

その理由は、足を下方へ踏み出したときに自身の全重量とバックパックの重さが、重力によって加速されて片足のみに負担がかかってしまうからだ。

 

そのような状況で、浮ついた石を踏めば足を挫いてしまうし、挫いた場所が道の端なら道から落ちてしまう。

さらには、その落ちた先が崖なら命を失いかねない。

 

ほんの小さなことが命取りになるのが、登山なのだ。

 

それを防ぐ方法として、とにかく歩幅を狭めて歩くことを習った。

そうすることで、足腰に対する負担を減らし、万が一にうわついた石を踏んだ場合にも修正が効きやすくなる。

 

だが、ただ単に歩幅を狭めただけではいつまで経っても下山できないので、小股ながらも素早く動かす必要がある。

 

大きな荷物を背負って、小股で素早く動くとまるでペンギンの動きのように間抜けな姿になってしまうが、真の山男はペンギンのように歩くものらしい。

 

補足として、大きな段差がある時は2、3歩に分けて歩くことで負担を減らすことができる。

 

 

街へ

 

教えられた通りに荷物を担ぎ、小股で歩くことで楽に麓まで辿り着くことができた。

 

迎えの車はすでに到着しており、すぐに街へ向けて出発することができた。

 

街には系列の山小屋従業員たちが利用できる寮があり、休暇中の人たちが利用している。

そこで数日間の休憩を取り、また大きな山小屋へと働きに向かう予定だ。

 

だが僕にとっての最大の難関は、この下山時の車だった。

 

元々乗り物酔いしやすいたちなので、できるだけ車での移動や山道の移動は避けているのだが、山小屋からの下山においては避けようがない。

うねうねと曲がりくねった山道は、乗り物酔いするために作られたようなものだ。

 

 
 
 

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