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北アルプスの山小屋で働く話42(自叙伝482)

 

低地病

 

車酔いの苦しさに追い討ちをかけたのが、酸素の問題だ。

 

低地で暮らしていて急に標高2800メートルもの高地に上がると高山病にかかる。

酸素が薄いので呼吸がしづらく、脳内への酸素供給量も限定される。

それゆえに頭痛がし、吐き気を催し、ひどい場合には痙攣などが起こることがある。

 

この症状は低地から高地へ移ることで起こるのだが、その逆に高地から低地へ移ることでも体に異変が生じる。

低地病などという病名があるわけではないが、山小屋従業員たちの間ではそのように呼ばれている。

 

その症状とは、急激に酸素過多の状況に置かれることで、異常な眠気に襲われたり、頭がぼーっとしたり、胸焼けなどの症状を感じたりする。

そして、この症状は乗り物酔いを加速させるのだ。

 

 

乗り物酔い

 

僕は前回山に上がって以来、四ヶ月半ほどぶっ続けで2800メートルの山の天辺にいた。

 

非常にシンプルで質素な暮らしの日々だ。

車に揺られることもなければ、排気ガスを吸うこともない。

 

そんな状況から一気に低地の山道を走り、街中を通り抜けることで、激しい乗り物酔いに襲われた。

僕の人生では、数年に一度激しい乗り物酔いに襲われるが、この時もその一つだ。

 

何度も何度も途中で車を止めてもらい、胃の中のものを全て吐き続け、胃が空っぽになったあとは黄色い液体を吐き続けた。

 

同乗の人たちを待たせているが、こちらとしてもどうしようもない。

とことん苦しみ抜いた上で、ようやく街にある寮まで辿り着いた。

 

最高に素晴らしい山の体験の後に、とてつもなくつらい乗り物酔いを経験するのは、バランスが取れているようでもあったが、意味深なものでもあった。

 

 
 
 

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