オアシスでの生活
日々の生活は単純だが充実したものだった。
僕とIちゃんは外に張ったテントで寝ていたので、プライバシーや個人の時間を確保できたので、その点に関しては他よりも楽だったようだ。
テントでの生活には良い点と悪い点があり、プライバシーや自由さは素晴らしかったし、自然と密着した暮らしも気持ちがよかった。
だがその反面、砂漠の自然と密着するのは楽なものでは無かった。
昼
フェスティバル中にキャンプしていた時から気づいていたが、テント暮らしが日常になってからより一層実感したのが、昼夜の寒暖差だ。
昼間に直射日光に当たると、”暑い”を通り越して、”熱い”になり、さらに時間が経つと”焦げる”になり、さらに時間が経つと”痛い”になった後に、最後には”危険”という領域になる。
”危険”を通り越せば、”死亡”まで一直線だろう。
黒い色の車がいれば、ボンネットで卵焼きが作れるかと思われる。
昼間はあまりにも暑すぎて危険なため、殆どの時間を小屋の中で過ごした。
外は暑くとも小屋の中は心地のいい気温が保たれている。
夜
昼間は恐ろしいほど暑いが、夜には恐ろしいほど寒くなる。
僕たちはこの気温の変化を季節に例えて楽しんでいたが、夕暮れ時に秋が来て、日が沈むと冬が来る。
冬になると、昼間とは真反対の気候が襲って来る。
夜中じゅうに気温はみるみる下がり続け、明け方には氷点下に近くなる。
一度は水瓶に入れて外へ置いておいた水が、朝見ると凍っていたほどだ。
実際に水が凍る温度なのである。
かなり過酷な環境だったが、若さゆえか大した苦もなく乗り越えることができた。
冬が来れば、全ての服を身にまとい、フェスティバルのお下がりの毛布に何重にも包まり、重なり合って夜を過ごす。
この寒さはカップルだから乗り越えられたとも言えるだろう。