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インドへ舞い戻る話2(放浪記174)

 

デリー

 

空港から降り立った瞬間、タクシーの客引きと押し売りと物乞いたちが集団で押し寄せてくる。

日本の穏やかな空気感から離れてたったの数時間で、僕は完全に異世界に飛び込んでいた。

 

彼らの目のギラツキに生きることへの真剣さが溢れている。

この必死な空気感が懐かしく、彼らの生きることへの情熱が僕の心へと流れ込んでくる。

 

その瞬間に僕の魂は輝きを取り戻し、自分自身に戻ったと言うような感覚を持った。

 

インドへ帰って来たんだと言う喜びを噛みしめる。

すごい勢いで押し寄せる彼らは、ウザくもあったが、懐かしさに頬が緩んだ。

 

日本の空気に馴染んだ感性で、あやうく連れて行かれそうになるが、ここはインドだ、と心を引き締めて立ち止まった。

 

緩んだ頬を引き締め、目を逸らしNOを連発しながら足早に立ち去る。

こういう態度を取りたいわけではないが、気を緩めていては根こそぎ身ぐるみが剥がされるのはインドの生命力ゆえである。

ここは高原の野原ではなく、南国のジャングルのエネルギーを持っていた。

 

しょっぱなから全力で押し問答しなければ行けないと言う、生きる事の必死さに心が踊る。

「これだよ、インド!」と心の中の叫び。

 

普通の感覚だと、こういった押し問答に心が折れてしまう人も多いとは思うが、インドを受け入れきった旅人には、生命を活気づける活性剤のようなものだった。

 

 

値段交渉1

 

物乞いたちを押しのけ、オートリクシャーと呼ばれる3輪のバイクの運転手に話しかけて、目的地まで連れて行ってくれるように交渉する。

ここでも勿論、押し問答がある。

 

提示された値段が適正価格なのかどうかは、初めてこの街に来る僕には分からないが、インドのオートリクシャー運転手のほぼ全員が、適正価格の4倍ほどの値段を吹っかけてくるのはよく知っている。

 

僕は、「インドにはもう何年も通っていて、適正価格を知ってるよ。この俺様にそんな値段を吹っかけてくるなんて、バカ言っちゃいけないよ。」といった態度で、提示された値段に対して、驚きながら呆れて鼻で笑う態度を見せる。

値段交渉する気も無く、さっさと次のまともなオートリクシャーを探そうとするような演技。

 

それを見た運転手が僕を追いかけてきて、半額の値段を提示する。

僕は、呆れ顔の演技を崩さず、提示された半額のさらに半額を要求する。

まだ、軽く立ち去ろうとする姿勢は崩さない。

 

 
 
 
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