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放浪記065

共産主義国家中国を旅する話2(放浪記065)

出航

 
 
 
自分のベッドに横になってガイドブックをパラパラとめくっていると、一人また一人とやって来て、部屋の半分ほど埋まったところで船が出港した。
 
同室にいるのは中国人出稼ぎ労働者ばかりで、話したりはできなそう。
 
皆自分のベッドで静かにしている。
 
 
 
出港してから数時間して大海原へ出たあたりから様子がおかしくなって来た。
 
船が予想以上に大きく揺れる。
 
それまでにも何度かフェリーに乗ったことはあったが、全て内海を航海するもので、こんなに揺れたことは今まで無かった。
 
 
 
 
 
 

船酔い

 
 
 
予想以上の揺れに対して、予想通りに船酔いしてきた。
 
以前、ペルーの山道の話でも書いたが、僕は非常に乗り物酔いしやすいタチで、何度も辛い目にあっている。
 
 
 
何時間かは揺れに耐えて吐き気を抑えて来たが、限界が近づいて来たので、吐く準備をしようとトイレへと向かう。
 
幸運なことにトイレとの距離は3メートルほどだったが、その3メートルを歩くのが至難の技だった。
 
 
 
立ち上がった姿勢ゆえか、1メートルほど歩いたところで、船の揺れに大きく翻弄されて吐き気は頂点に到達。
 
残りの2メートルは、ほとんどジャンプするような感じでトイレへと走り、かろうじて廊下に吐かずに洗面台に吐くことができた。
 
 
 
吐き終わって、多少スッキリしてベッドで休む。
 
数時間すると、また吐き気が込み上げて来て、トイレへと飛び込む。
 
 
 
このプロセスを幾度となく夜中じゅうも次の日も繰り返した。
 
乗り物酔いの吐き気ラッシュには慣れてはいるが、吐くのが辛いことには変わりはない。
 
 
 
何度も何度も繰り返すことで、最終的に吐くものが一切なくなったのでベッドに横になったが、気分の悪さは一向に治まらない。
 
いつになったら吐き気が治まるのかと不安に思いながら、船の揺れに合わせて時間が過ぎるのを待ち続けた。
 
 
 
どれくらい吐き続けたのか、休むことができたのか、睡眠をとることができたのかも分からないような状態で、ベッドで過ごしていると、上海到着のアナウンスが流れて来た。
 
とうとう何もせず船酔いしただけで二泊三日の船旅が終わった。
 
本当に純粋にベッドとトイレの往復だけだった。
 
 
 
この3日間、卓球台で遊ぶどころか、一度の食事すらしていない。
 
 
 
これからの期待に満ちた大冒険の始まりが、最悪の船酔いで始まったことに大きく落胆したが、自分の乗り物酔いしやすいという弱点をよく知っていたので、よくある話として受け入れることにした。
 
 
 
 
 
 

上海

 
 
 
船は大きく揺れたものの、何の問題もなく無事に上海までたどり着いた。
 
やっとの思いで、揺れから解放されて、陸地に足を着くことができた。
 
 
 
体の内側では、まだ波の揺れを繰り返している。
 
 
 
港には予想通り漢字が溢れている。
 
日本では使われていない感じも多かったが、幸いなことにほとんどの文字の意味が理解できる。
 
これなら何とかなりそうだ。
 
 
 
税関に行き、パスポートを見せる。
 
そのやりとりの中で、パスポートと言う言葉を使ったのだが、全く通じない。
 
話している相手は税関の職員。
 
世界有数の大都市の国際港なのにパスポートという英単語が通じない。
 
 
 
なんてこった!
 
本物のカオスの国に来てしまった。
 
 
 
税関で言葉が通じないという不便極まる状況にも関わらず、本当のカオスを体験するという目標をしょっぱなから達成した僕は、船酔いと空腹で弱り切っていたにも関わらず、気分が高揚していた。
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 
 

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