放浪記014

抑圧された怒りが爆発する高校時代の話2(放浪記014)

抑圧される怒り

 
 
 
僕は、全てに対して怒っていた。
 
これと言った怒りの対象がある訳ではなく、ただ怒りがそこにあった。
 
 
 
その怒りは、表に出ることはなく、内側で留まり続け抑圧されていた。
 
抑圧された怒りは、その圧力を増し僕の魂を締め上げていく。
 
 
 
自分が何に対して怒っているのかは、全く理解していなかった。
 
 
 
今になって思えば、この怒りの1番の原因は、自我が目覚め始めたことだと思う。
 
 
深夜番組や立ち読みや、映画を見ることで、僕の知性が成熟化し、自意識を持つようになった。
 
 
自分と言う存在に気づくことで、自分がいかに不自然で理不尽な人生を送っているかに気づいた。
 
その事に気づきつつも、何もできない自分。
 
 
 
退屈な高校生活も、怒りの原因の一つだった。
 
 
 
高校の学力はかなり低くて、中学2年生くらいのレベル。
 
同級生も幼稚な人間が多く、僕は陰ながらバカにしていた。
 
 
 
退屈な日々。
 
 
唯一の出口は、文化的な方向だったが、それだけでは僕の魂は救えなかった。
 
 
 
ある朝、目が醒めると、とてつもない怒りが心を覆っていることに気づいた。
 
何かの夢でもみていたのだろうか、原因は分からないが大きな大きな怒り。
 
 
 
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その日は、たまたま家に誰もいなかったので、半泣きになりながら枕を殴り続けた。
 
生まれて初めて怒りを外側に表現する。
 
16年間積み上げられてきた怒り。
 
原因のはっきりしない、やるせない怒り。
 
 
 
何に怒っているのかもよく分かっていなかったが、ただただ枕を殴り続けた。
 
 
 
これは、僕が怒りを放出させる前の最初の突起だったようだ。
 
 
 
 
 
 
 

阪神大震災

 
 
 
高一の冬休みが明けてすぐに、阪神大震災が起こった。
 
 
 
僕は2段ベッドの上段に寝ていたので、その揺れは凄まじかった。
 
家中の物が倒れて散らかり、結構な惨事。
 
テレビを点けると大地震のニュース。
 
学校も休みになったらしい。
 
家の外に出ると、建物にヒビが入っていたりした。
 
 
 
僕は、命が助かった喜びよりも、地震の恐怖よりも、その被害を心配するよりも、学校が休みになったことが心底嬉しかった。
 
それと同時に、自分が心底学校を嫌っている事に気づいてしまった。
 
 
 
僕が願ったのは、地震による被害が街や人々に出ないようにと言う事ではなく、地震で学校が潰れて行かなくていいようになる事だった。
 
 
 
だが不幸にも、地震は一度きりで世界を破壊してくれる事は無かった。
 
 
 
僕は自分が心底、高校に行きたくない事に気づきつつ高校に行き続けた。
 
自分の意思で辞めることができると言う事実も、辞めずに高校に行き続ける辛さを強調させていた。
 
 
 
数ヶ月後にサリン事件も起こるが、僕はただただ世界を破壊してくれと願うばかり。
 
 
 
何もまともに考えることができず、死んだ魚の目で日々をやり過ごしていた。
 
 
 
 
 
 
 

姉の結婚

 
 
 
ちょうどこの頃、姉はエホバの証人としてのスペイン語の勉強が進んでおり、その活動を通して知り合った、日本に働きにきていたペルー人の男性と結婚する事になった。
 
 
 
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姉が、外国人と結婚すると言う一大事に親戚一同騒然となった。
 
 
 
こう言う時に本音が垣間見えるのだろうか、叔母はうちの家系に外国人の血を混ぜるとは穢れてしまうなどと、差別主義者全開の発言をして皆を驚かせた。
 
 
 
母は、大して気にしていないようだった。
旦那がエホバの証人で、今後も聖書の勉強を続けていくのなら、なんだって良いって考えのようだ。
 
 
 
僕も全く気にしておらず、正直なところどうでも良かった。
 
自分の人生のサバイバルに必死なだけだった。
 
 
 
姉は、かなり大変だったらしい。
 
当時は今よりも、圧倒的に外国人と日本人の関わりは薄く、似たような例は他にない。
 
僕たち家族にとっても未知の出来事だが当然、姉にとっても大冒険の選択だった。
 
だが、姉は恐れずに自分の信じることを貫き通した。
 
 
 
姉の外国との繋がりと、恐怖に打ち勝って行動する強さに、僕は無意識のうちに影響を受けていて、何年か経ってから、姉の影響を再確認する事になる。
 
 
 
 
ここが、僕の旅人生の流れの源泉だった。
 
 
 
 
 
 
つづく。。。
 

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