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ロンドンに住む話7(自叙伝311)

 

特権

 

Tくんは、このスクワット・ハウスに住む旅人に出会ったことで、ここへ招待された。

招待がないと滞在することはできないので、ラッキーな話だ。

 

家賃無料の滞在は誰にとっても魅力的なもので、その権利を巡って水面下の競争が行われていた。

Tくんは2週間のみという条件の元に招待されたのだった。

 

僕にとっても、このスクワットハウス体験は全く目新しいものだった。

社会で生きる=お金を稼ぎ続けなければいけない、だったので、お金を稼がずに無料の家賃と無料の食料で普通に生きている人たちに出会ったのは、目から鱗の体験だった。

 

今までの人生観を崩壊させるような感覚。

必要なのは、お金ではなくて、暖かい寝床と食料だということ。

暖かい寝床と食料があれば、必ずしもお金が必要なわけでは無かった。

 

まさか世界最大級の大都会のど真ん中で、お金の価値観から解放されるとは想像もしていなかった。

 

 

お茶

 

僕たちは、工場内の敷地を利用した巨大な中庭で、お茶を飲んで会話を楽しんだ。

 

工場の敷地はかなり広く、奥の方へ行くと放置された工場施設が散らばっているようだ。

 

軍服は腐るほどあるから、欲しかったらいつでもどうぞと提供されたが、街中で軍服を着るような趣味はないのでお断りした。

だが、いろいろなものが無料で手に入ることには驚きの連続だった。

 

何よりも驚いたのは、工場の事務所にある電話だった。

何年も前に工場は封鎖されているのだが、事務所の電話回線は繋がったままらしく、世界中どこへでも無限に電話をかけ放題だというのだ。

 

政府の仕事のずさんさには驚いたものだが、そういうものらしい。

現に、もう何年も彼らの不法占拠を放ったらかしにしている。

 

 

興味

 

僕もスクワットハウスに住んでみたい、という興味が湧いてきたが、ここはすでに満員で、空きを待っている人たちが沢山いる。

自分でスクワットハウスを見つけることなど、とうてい出来そうにも無い。

 

そもそも、ロンドンに住みながら、片言の英語しか話すことができないので、独立して政府の建物を占拠して住むことなど夢のまた夢だった。

 

Iちゃんも「そういう生き方は自分にはアヴァンギャルドすぎて絶対無理」と猛烈に反対された。

 

だが、このスクワット・ハウスに住むという生き方は、僕の凝り固まっていたお金に関する感覚を解きほぐしてくれたようで、人生観に大きな影響を与えることになった。

 
 
 

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