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ロンドンに住む話6(自叙伝310)

 

軍服工場

 

僕は、インドで出会った友人のT君に会いに彼の住処を訪ねた。

 

そこは、スクワット・ハウスと呼ばれるスタイルの共同生活所になっていて、大勢の人たちが共同で住んでいる。

話によると、この建物は元々は軍服を作っていた工場らしい。

 

それが、政策の変更に伴い使用されなくなって、しばらくの間放置されていたところを、数年前に誰かが忍び込んで、勝手に住み始めたのがこのスクワットハウスの起源だという。

それ以降、彼らの友人や友人の友人がやってきては住むようになっていったらしい。

 

現在では、2つの居住用のビルに30人ほどが共同で住んでいるという。

 

 

二つの勢力

 

その居住者の個性は見事に二つに分かれていて、T君のいる居住棟は主に芸術家と旅人の住処になっている。

画家、映画作家、ミュージシャン、DJ、旅人、ヒッピー、瞑想家などだ。

この居住棟は明るい雰囲気に満ちている。

 

もう一つの居住棟は、その逆に暗い雰囲気に溢れており、酔っ払いとジャンキーとホームレスの溜まり場になっている。

 

それぞれの住人はあまりにも雰囲気が違うために仲良くはしていないが、だからと言って争うわけではなく、イヤイヤながらも平和的に共存していた。

誰にとっても無料の住処はありがたいもので、分け合うことを学んでいた。

 

 

ダンプスター

 

ここの住人たちの多くは、お金のために働いている人はあまり居ない。

 

それでも食費がかかるじゃないか?とお思いだとは思うが、そこにも彼らなりの裏技があった。

 

それは、ダンプスター・ダイビングというもので、スーパーマーケットのゴミ捨て場に捨てられた廃棄処分の食料を拾ってきて食べるという物だ。

 

一般的な感覚からするとゴミ捨て場から食料を拾ってくるなんて、乞食のすることで、まともな生活をする人間がするものでは無い、というのが大凡の意見だろう。

僕も当時は同じように考えていた。

 

この時から10年近く経ってから知ったのだが、ダンプスター・ダイビングでゴミ箱から拾ってくるものは、30分前まで店の陳列棚にあった新鮮な野菜や果物で、物によっては賞味期限前のものまである。

 

例えば、週に一回、賞味期限切れの商品を廃棄する場合は、賞味期限が後6日で切れるものも廃棄処分にする。

 

同じ要領で、まだ熟してもいない果物が捨てられていたり、芽の出たジャガイモなどが捨てられていたり、あるいは持ち手の部分が壊れた6本入りの缶ビールが捨てられていたりするのだ。

 

このスクワットの住人たちは、無料の住居と無料の食料を利用して、生活費のかからない生活をして、芸術活動に打ち込んでいた。

別棟の人たちは、酔っ払うことに費やしていたわけだが。

 
 
 

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