ヒマラヤ山脈の温泉村の話5(放浪記182)

 
 
 
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Rさんの中毒歴

 

Rさんは10年ほど前にゴアに来た時に、一夏の間じゅうブラウンシュガーにハマっていた。

 

彼は強烈な個性とエネルギーを内包している割りに、ものすごくシャイで控えめなところがあり、多くの抑圧が心の中にあった。

それはエネルギーに満ちた彼が封鎖的な片田舎で育ったことにも関係しているようで、心の中にある種の捩れを抱えていた。

その捩れがブラウンシュガーにより解れることが彼の快感につながり、半年もの間ゴアで阿片窟に篭るような生活に繋がっていたようだ。

 

彼は、あの暮らしに戻る事は無いとはっきり宣言していたので、ここバシシトで以前の不健康なパターンにハマっていることが不思議でもあり、悲しかった。

 

 

きっかけ

 

話を聞くと、きっかけは課長ことNさんだった。

課長が遊びでブラウンシュガーを取り、気軽な気持ちでRさんを誘ったのが始まりだ。

 

課長は中毒癖が無いので、単なる旅人のドラッグ遊びとしてたまに摂取し、その場にいた人に共有していた。

彼からすると、遊びに来た人にお茶菓子を出すような感覚で、ブラウンシュガーを提供したのだと思う。

 

だが、Rさんは中毒癖のある性格で、一度やったが最後、10年前の感覚が一瞬で蘇り、抗うことが出来なかったようだ。

Rさんは自分の性格をよく知っているので、自分が山に篭っている限りブラウンシュガーから抜け出せないことを理解していた。

自分がそこから抜け出すには、よその国に行ってブラウンシュガーが手に入らない状況に行かないと無理だと知っていた。

 

そう言ったことを完全に受け入れた上で、この数ヶ月をブラウンシュガーに費やすことを覚悟したようだ。

 

 

自由意志

 

僕にとっては友人が自己破壊しているのを見るのは忍びなかったが、それ以上に個人の自由意志を尊重していた。

本人が状況を理解して、自由意志で自己破壊する分には個人の自由だし、僕には友情を保つ以外には他に方法がないと理解していた。

Rさんは自由意志で闇に堕ちて行くことを選択していた。

 

昼夜の感覚は既になく、起きている間はひたすらゲームをして、お腹が空いたら箱買いしたキットカットのチョコレートを食べる。

甘いチョコレートを食べても歯は磨かず、虫歯が悪化して行っていたが、痛みをブラウンシュガーを摂取することで誤魔化していた。

 

果てし無く馬鹿げていて、完全に病的だが、不思議なことにRさん本人は相変わらず優しくて暖かな人柄を保っていた。

 

 
 
 

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