サハラ砂漠の滝でキャンプする話5(放浪記426)

 

滝、湖、満月

 

僕たちは、滝の上側にある少し盛り上がった岩場に座り、夕陽を見ていた。

 

夕陽が沈むと、満月が地平線から昇ってくる。

 

砂漠においては、家の天井もなければ、高層ビルもない。

山も森もなければ、雲ひとつとしてなく、月が昇ればその全容が目の前に現れる。

 

周囲はまだ明るいので、満月の姿はうっすらとしか確認できない。

それでも昇りたてで、まだ地平線に近いため、その大きさが際立って見える。

 

あたりは徐々に暗くなっていき、満月の宴の始まりを告げていた。

 

 

宇宙

 

前回の満月では、焚き火を囲み、楽器を演奏し、友人たちが歌い踊っていた。

 

今回は焚き火をするような薪はなく、楽器を演奏するミュージシャンもいなく、歌い踊る友人たちも居なかった。

ありのままの大自然と、僕たち3人だけだ。

 

暗くなり、寒くなってきたが、冬支度はしっかりと終えている。

 

大地にそのまま寝転がり、空を見上げる。

 

砂漠以外の土地で寝転んで空を見上げると、その一部は山に隠れていたり、建物に隠れていたりするが、砂漠においては体の前面全てが空だ。

 

前に空があり、後ろに地面がある、ただそれだけだ。

 

このシンプルさは想像以上に気持ちがよかった。

 

 

自己

 

シンプルであるだけに、余計なものはなく、浮かび上がってくるものは自己の内面世界そのものだった。

 

僕は、モロッコに来て以来の記憶を思い返していた。

フェスティバルへと至る経緯があり、そこから発展したオアシスでの生活。

 

色々な出会いがあり、色々な経験があった。

 

つい数ヶ月前まではロンドンの都会の真ん中で暮らしていたことが嘘のようだ。

Yくんは一ヶ月半ほど前までは東京のど真ん中で暮らしていた。

 

今では僕たちからは都会的な要素は完全に抜け落ちていて、砂漠の砂や、オアシスの水や、空に浮かぶ月に馴染んでいた。

 

シャワーも長いこと浴びていない。

 

砂漠においては、全てが乾燥しているため、砂がかかっても振り払うだけでよく、汗をかいてもすぐにサラサラになる。

砂の匂いがしても体臭はせず、不快感などはないので、誰もシャワーのことなどは気にしなかった。

 

 
 
 

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