北アルプスの山小屋で働く話5(放浪記446)

 

1日目

 

不気味な朝礼での唱和や、仏教修行のような環境整備が終わった後に、まともな仕事が始まった。

 

僕もIちゃんもR君も初日なので、仕事を始める前に仕事全体を知ることから始まった。

小屋の仕組みはどうなっていて、どう言った流れで仕事が進んでいくのか。

階段の歩き方から靴の脱ぎ方まで、事細かくルールが決められており、皆がそれに従うことで山小屋の運営が成り立っていた。

 

僕は自由に旅して暮らしていたので、そんなルールは大嫌いだったが、従業員として雇われている以上、従う以外に余地はない。

 

細かなルールそれぞれにしっかりとした意味があり、納得する物だったので従うことにしたが、ここまできっちりかっちり管理されるのは、僕が山小屋の仕事に求めていた自由な自然の息吹とは大きく違っていた。

 

 

昼食

 

一通り小屋の説明が終わった後は、昼食の給仕を教わることになった。

 

給仕にも事細かなルールがあり、それぞれにしっかりと意味があった。

テーブルの拭き方は、ゴミを床に落とさないように拭きつつ、最速で手を動かせるような考え抜かれた拭き方。

お盆に載せるうどんの向きや、箸の置き方までにルールがあった。

 

とにかく細部まで事細かく決められていて息苦しかったが、逆にいうと、限られたスペースで能率よく行動するには、皆の一致した行動が必要だということもよく理解できた。

 

 

部署

 

夕食が始まる頃にはそれぞれが所属する部署が発表された。

 

僕は、3週間後には別の小さな山小屋へ移るので、今いる大きな山小屋では保留扱いで、色々な仕事を全般的に手伝うことになった。

 

Iちゃんは、女性的な魅力を買われて”喫茶室”の担当になった。

R君は、大工をしていたという経歴を買われて、大工仕事全般を担当する”設備”の担当になった。

 

僕は、色々な仕事をして社会勉強をしたいと考えていたので、特定の部署に配属されずに色々な仕事を経験できることはありがたかった。

 

 
 
 

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