峠越え
これから宮崎から鹿児島へと向かうのだが、そのためには峠を越える必要がある。
低い丘のようなものだが、自転車の旅では低い丘でも多くの体力を消費する。
疲れる道中になることが予想されるので、朝早くに出発することにした。
山道を登り始めると、そこにはミカン畑が広がっていた。
そして嬉しいことに、みかんの無人販売が至る所にあった。
2キロくらいの熟れたミカンがたっぷりと入った袋が、たったの百円で売られている。
ペットボトルの水を買うよりも安く、熟した美味しいみかんを大量に食べれるなんて、自転車旅行者には最高の道のりだ。
僕はこまめに休憩してはみかんを食べてエネルギーと水分とビタミンを補給した。
海
みかん畑の峠を超えた先には、遠くまで見渡せる海面が広がっていた。
海を見下ろしながら、山道を駆け降りる。
このパターンはすでに何度も繰り返しているが、苦労して峠を登った後の、長い下り坂は自転車旅行の最高の醍醐味だ。
車で山を登っても大した感慨はないが、自転車での上り坂の苦労は喜びを築き上げる。
活火山
海の向こうには、桜島が見える。
頂上ではうっすらと煙を上げているようだ。
生まれて初めて見る火山は、生きている命を感じさせた。
文字通り地球は生きており、火山は活動している。
桜島まで近づくと、その雄々しさに息を呑む。
麓にある道路の名前は、溶岩道路、いかにもな名前が旅を盛り上げてくれる。
温泉
この日の目的地の龍神温泉にたどり着いた。
事前に仕入れた情報によると、この温泉は海に面した温泉で、海の広大さと火山の命を同時に楽しめる温泉らしい。
料金は他の温泉に比べると高めだが、他にない絶景を考えると、試さないわけにはいかない。
建物の中に入ると、白装束を渡された。
温泉は混浴なので、白装束を着て入らないといけないらしい。
温泉に入ると、他の客たちも皆が白装束を着ていて、時代劇のセットに入ったかのような気分になる。
最高の温泉で1日を締めて、その日は近くの海岸でキャンプすることにした。