バイト初日
仕事の手順は、オーナーの奥さんでタイ人のトゥクさんが、日本語で説明してくれた。
説明といっても、お皿を洗うだけなので、大した説明では無かったが、全体を通して日本語で説明してくれるのは本当にありがたかった。
説明が終わるか終わらないかの頃には、洗うべきお皿がやって来た。
みんなが注視する中でお皿を洗い、乾燥台に並べる。
みんなの反応からすると、一応合格のようだ。
お皿は次から次へとやって来て、休む暇もなく洗い続けた。
夜のラッシュ時が過ぎ去ったあたりで、オネエサンがまかないを作ってくれる。
タイ語訛りの英語で”フード、イート”と言ってくれる。
僕にも十分理解できる英語だ。
まかないを食べ終わった後は、残りの皿洗いを片付けて、仕事が終了。
特になんの問題もなく初日の仕事は終了した。
家探し
皿洗いのバイトは特になんの問題もなく淡々と続いて行った。
仕事は夕方からなので、昼間の間はIちゃんと家探しに勤しんだ。
これは西暦2000年の話で、インターネットで家を探すとかのIT技術はまだ発達していない時の話。
Nちゃんに紹介してもらった地元の情報誌をみて、電話で連絡して家を見せてもらってと言う手順。
これも、Nちゃんに電話してもらって手続きを進める。
本当に何から何までNちゃんにお世話になっていた。
いくつか部屋を見て回り、結局Nちゃんの家の隣の駅にある部屋を借りることになった。
8畳くらいの部屋をIちゃんと二人で住む。
家賃は56000円ほどだったので、一人当たり28000円になる。
給料の安さや、Iちゃんが働いていないことを考えると、楽な家賃では無かったが、ロンドンの真ん中に住む経験を考えると悪くないものだった。
大家さんは黒人の家族で、お父さんは盲目の音楽の先生。
まるでスティービー・ワンダーみたいだと思い、一発で気に入った。
音楽好きの心を鷲掴みにされた。
お父さんと高校生の娘の二人暮らしで、お母さんはどこか別のところに住んでいて、週に一度ほどこの家にやってくる。
お父さんはすごく優しくて暖かい性格をしていて、この家なら安心して住めそうだと言う気がした。
こうして、仕事も家も見つかり生活の基礎が整って行った。