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モロッコで21世紀を迎える話22(放浪記365)

 

日本庭園

 

ある日突然に、砂漠のオアシスに浮かぶ島の真ん中に日本庭園を作ることになった。

 

今の時代なら、スマホで日本庭園を検索してなんらかのイメージやアイデアを得られるのだろうが、20年以上前のサハラ砂漠には、メールのやりとりをするのがやっとのインターネットカフェしか無かった。

 

僕たちの持っていた日本庭園のイメージは、丸い小石が綺麗に並んだお寺の中のようなイメージだったので、そんな感じのものを作ろうと考えた。

 

だが実際にフェスティバル会場の島に来てみると、綺麗な丸い小石はなく、赤茶けた岩がゴロゴロと転がっているだけだった。

 

今となっては、丸い小石は川の流れや波の力によって、長年かけて削られることで小石になると知っているが、当時はそんなことなど考えもしない。

砂漠に来た、小石はない、さあどうしよう? といった感じだ。

 

 

苦肉の策

 

どうしようもないので、砂漠中からゴロゴロとした岩を運んでくることにした。

できる限り大きさを揃えて、色味も揃えて、なんとなく見た目を美しくする。

 

最初のうちはまばらだった岩の庭園も、ある程度の数が集まってくるにつれて、なんとなく人為的なアートに見え出した。

 

僕たちは数日に一度は会場へとやってきて自称日本庭園を作る日々を過ごした。

 

最終的にはなんらかの人為的なオブジェが砂漠のオアシスに浮かび上がることになり、僕たちは自分たちの出した成果を自画自賛していた。

訳がわからんと言えば訳がわからんが、なんらかの規則性があり、なんとなく美しい。

1000年後の人類がこのオブジェを見たら、研究の対象になるかもしれない。

 

 

オアシスのボランティア

 

しばらく前に初めてガンドルフさんと出会った時は、彼一人だったフェスティバル会場も、今では20人くらいがバラけて働いている。

 

フランス人アーティストのR君もガンドルフさん率いるチルアウトエリアでのオブジェ制作に励んでいる。

 

彼が作っているのは、蝋燭を灯すことのできる小さな小舟で、フェスティバル中の夜に水際に浮かんで光のオブジェを作り上げるらしい。

 

Yくんは、ダンスフロアのチームに加わって、本気の肉体労働でフェスティバルのステージを作り上げる仕事に参加している。

数日ぶりにあったY君は、小麦色に日焼けして、肉体労働の汗と砂漠の砂埃に塗れて、モロッコへやって来た当初に持っていた東京の物書きの雰囲気はどこかへ消え去っていた。

 

 

 
 
 
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