向き合い
このパーティーでは皆がそれぞれ向き合っていた。
Iちゃんは、自分の夢である女優業を一旦横に置いてロンドンに来ていた。
日々をしっかりと楽しく過ごしてはいるが、夢を横に置いたことで、自分が世界から置いていかれているような気分になり、悶々とした鬱屈を抱えていた。
それが、この楽しくありつつもなんらかの空虚さを抱えたこのパーティーを楽しむことで、内観の引き金が引かれたのかもしれない。
レゲエ好きでノーテンキなNちゃんは純粋に楽しんでいたが、Dくんも向き合っていた。
彼の向き合いはかなり本質を捉えていた。
それは、このパーティーは実は僕たちが目指していたDJ Tsuyoshiのオーガナイズするリターン・トゥ・ザ・ソースでは無いのではないか、と言うものだった。
間違い
僕たちの誰もが楽しんでいるのは間違いがないのだけれど、何か違和感があり、何かが違っていることは誰もが感じていた。
特にDくんはロンドンへ来る前から、このパーティーのことを視野に入れていたので、特に気にしていた。
音楽はいつまでたってもサイトランスには変わらないし、客層もなんだか違うっぽい。
楽しいことには間違い無いけれど、これ、本当にDJ Tsuyoshiのパーティーなの?
チケットを見ても、どこにもリターン・トゥ・ザ・ソースの名前は書いていない。
しっかりとオーガナイズされた歴史のあるビッグイベントのはずなのに、蛍光のペラペラの紙切れに、値段と場所が印刷された安っぽいチケットだ。
そもそも、入場料もかなり安かったように思う。
Dくんの葛藤
彼は真剣にこのパーティーは僕たちの目さしていたものではないと考え始めていた。
パスポートをなくして、ダッカで軟禁状態で過ごし、グランストンベリー・フェスティバルをミスミス逃した上に、それを補うためのイベントになるはずだった、リターン・トゥ・ザ・ソースまで逃してしまった。
楽しいんだけど、、、と言うやるせない気持ちに苛まれる。
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