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インドを旅する話3(自叙伝088)

カルカッタの雨季

 
 
 
 
カルカッタに来ても雨季はまだ続いていたが、イラムやダージリンのような高山特有の肌寒さがないのはありがたかった。
 
 
温暖な気候だと濡れてもすぐに乾くし、全く寒くないので雨季の辛さは半減していた 。
 
 
 
 
 
そう風に余裕に思っていた矢先、カルカッタへ強烈な集中豪雨が襲ってきた。
 
 
雨は休むことなく振り続ける。
 
 
 
 
 
外は土砂降りだが、宿には食べ物は何もないので外へ食べに行かなければならない。
 
 
 
 
 
意を決して外へ出ようとしたら、玄関から先は洪水だった。
 
 
降水量が街の排水量を大きく上回ったのだ。
 
 
幸いにも宿の中は、段差のある玄関のお陰で洪水にはなっていない。
 
 
 
 
 
土砂降りだけならまだしも洪水と合わさっては、さすがに気力が削がれる。
 
 
 
お腹がすいたのを我慢して、もう少し様子を見ることにした。
 
 
 
 
 
半日ほど待ってみたが雨は降り止みそうにあらず、空腹の限界の方が先にやってきた。
 
 
このままではレストランまで閉店の時間になってしまい、何も食べないまま1日が過ぎてしまう。
 
 
 
 
 
僕たちは今度こそ本気で意を決して、洪水の中へ入っていくことを決めた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

毒の沼地

 
 
 
 
玄関から外をのぞいて見る限り、洪水は街全体を覆っているように見える。
 
 
 
 
 
宿から数十メートル離れたところに、小便専門の男性用トイレがあったはずだ。
 
 
その汚れも洪水の水に混じっている。
 
 
野良犬や野良猫の糞尿も混じっているはずだし、大都会の下水道の水もこの洪水の水に混じっているはずだ。
 
 
 
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僕たちは、この水が持つ病原菌の可能性に恐れおののいた。
 
 
だが、お腹の減り具合も切実な問題で、現にお店類の閉店時間は迫っていた。
 
 
 
 
 
もう一度、意を決し直して水の中へと足を踏み入れる。
 
 
洪水の深さは、太ももの真ん中あたりまで来ている。
 
 
履いているズボンを限界まで捲り上げて、濡れないようにして歩く。
 
 
 
 
 
蚊に咬まれて掻きむしった跡が、ジンジンと沁みる。
 
 
水に含まれている病原菌に、侵食されているかのようだ。
 
 
 
 
 
明らかにヤバイ感じが体の感覚として理解できる。
 
 
ここまで来るともう笑うしかなく、僕たちはヤバイヤバイとはしゃぎながら、毒の沼地を歩いた。
 
 
歩くたびに生命力が削がれていくような感覚を覚える。
 
 
 
 
 
足元は泥水の中で、何も見えない。
 
 
何度も履いていたビーチサンダルが脱げそうになるが、裸足で歩くのはあまりにも危険だ。
 
 
 
 
 
足の親指と人差し指でサンダルをしっかりと掴みながら、忍び足でレストランまで向かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

レストラン

 
 
 
 
 
僕たちが向かったのは、ブルースカイ・カフェと言うレストランで、インド人向けと外国人向けの料理を出しながらも、安食堂よりも少し高い値段で済むので、近所の外国人旅行者に人気だった。
 
 
 
 
 
中へ入ると、旅人たちでごった返している。
 
 
 
 
 
さすが、カルカッタへ来るような旅人たちだけあって、皆この非常事態を旅の経験として楽しんでいるようだ。
 
 
レストランの中は、笑顔と活気で溢れている。
 
 
 
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このレストランのメニューで、僕が特に気に入ったのは『チョコレート・ラッシー』と言うもの。
 
 
インドの一般的なヨーグルト飲料のラッシーは、ヨーグルトと砂糖と水を混ぜて作られるのだが、そこにチョコレートを入れたものがこれ。
 
 
それまで、チョコレートとヨーグルトと言う組み合わせの食べ物を食べたことがなかったが、苦味と酸味と甘味がバランスよく合わさったこの飲み物には、いい意味で常識を壊された。
 
 
 
 
 
 
僕たちは食事を終えて、帰り道の商店でお菓子をたんまりと買い込む。
 
 
万が一、洪水が続いた時の備えだ。
 
 
 
 
 
土砂降りの洪水の中を歩いて、びしょ濡れになったが、腹は満ちたし、お菓子も買い込んだ。
 
 
だが、足の虫刺されの跡が疼くように痛む。
 
 
 
 
 
やはり、ヤバイ一線を超えたのか?
 
 
 
 
 
友人たちも同じような症状を訴えている。
 
 
 
 
 
僕たちは足を真水で洗い、食塩を大量に刷り込んだ。
 
 
痛みは増したが、殺菌はできているはずだ。
 
 
痛みの質も健康なものに変わったように感じる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

次の日

 
 
 
 
 
足の消毒は成功したようで、何の痛みもなかった。
 
 
事後処理は大事なようだ。
 
 
 
 
 
雨はやみ、青空が垣間見え始めたが、洪水はまだ続いている。
 
 
僕たちは、食塩消毒で毒の沼地を中和できることを知ったので、昨日よりも自信を持って洪水の中へ入っていった。
 
 
 
 
 
もう、すでに日常化して来ていた。
 
 
 
 
 
さらに次の日
 
 
空は晴れ渡り、洪水は終わった。
 
 
 
 
 
今度は政府による事後処理が始まる。
 
 
専門業者の人たちがやって来て、街中、宿中に殺菌剤を撒いて回る。
 
 
この作業は、その後も数日にわたって行われ、強烈な塩素の匂いと共に洪水騒動は幕を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 

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