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インドを旅する話4(自叙伝089)

沈没

 
 
 
 
カルカッタへ来て以来、色々な変わり者の旅人に出会うようになったが、Kさんほどの変わり者も、なかなか居ないだろう。
 
 
 
 
 
彼は22歳の京都大学の学生で、休学してアジア旅行へ出た。
 
 
京大生は頭が良く、個性的で変わり者が多いと言う事で知られているが、彼は、そんな京大生を代表するような人間だった。
 
 
 
 
 
旅人の世界には”沈没”と言う言葉がある。
 
 
それは、目的地を目指す旅人が、ひょんな事から一つの街を気に入り、その後の予定を変更してまで、その街に長期滞在することを言う。
 
 
多くの場合は”沈没”すると言うことは、その後の予定を変えてでも滞在したい街に出会ったと言うことを意味しており、その予定を壊す破壊的な衝動とは裏腹に、歓迎され喜ばれることの多い出来事だ。
 
 
 
 
 
Kさんは、その”沈没”行為を、ここカルカッタでしていた。
 
 
よりによって、観光名所がなく世界でも最も貧しくて汚い地域に、世界でもトップクラスの頭脳と将来を約束されている京大生が沈没していた。
 
 
彼の沈没具合は半端なく、数週間というレベルを超えて、すでに9ヶ月もの間沈没し続けていた。
 
 
 
 
 
インドのビザは6ヶ月支給され、期限が切れると外国に出てビザを作り直さないといけない。
 
 
タイのバンコクから飛行機でやって来て、カルカッタにやってきた彼はビザが切れるまでの6ヶ月間、インドの街を一つ二つ訪ねた以外はカルカッタに滞在し続けた。
 
 
 
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その後、ビザが切れたあとは、もう一度バンコクへ飛び、インドのビザを再取得してからカルカッタへ舞い戻り、そこから既に3ヶ月沈没していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

行動

 
 
 
 
 
なにも彼は、この9ヶ月の間、他の旅人達と刺激的ではありつつもダラダラとした日々を過ごしていた訳ではない。
 
 
彼は、彼の頭脳で考えた彼なりの活動をしていた。
 
 
 
 
 
隣の宿ではマザーテレサの施設で奉仕活動をしている人が多いが、彼はその修道院的な雰囲気が好きでは無かったのだろう。
 
 
だが彼なりに、この地の極貧の人達と関わりたかったのだと思う。
 
 
彼の表現は、地域にどっぷりと浸り、ストリートチルドレン達と友情を築く事だった。
 
 
 
 
 
色々な活動をしていたようだが、その中の一つは、路上で『かき氷屋』をする事だった。
 
 
 
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とは言っても、ここは一家に一台冷凍庫があると言うような環境ではない。
 
 
 
 
 
彼は地域の氷問屋を見つけ、巨大な氷を荷押し車で運んで『かき氷屋』をやっていた。
 
 
実際に路上で稼ぐことで、路上生活者たちとの繋がりは容易になっただろう。
 
 
修道院の奉仕活動では表現できないような、彼なりの愛を表現していた。
 
 
 
 
 
 
興味を持った僕は、インドでの食品衛生や路上販売の免許などは、どうしているのかと聞いてみた。
 
 
彼の答えは簡単で、インドにはそういう事は関係ない、と言う単純なものだった。
 
 
 
 
 
 
彼の使っていた氷は、レストランで頼むコーラの中に入っているものと同じで、インド人や長期旅行者には何の影響も無い物だが、先進国から来てすぐの旅人は必ずお腹を壊すような代物だ。
 
 
そういった事も含めての、インドにはそういう事は関係ない、と言う単純な返事だった。
 
 
 
 
 
 
免許などが、あまり意味のないインドだからこそ、免許に関しての意味がある行動があった。
 
 
Kさんは、この9ヶ月の期間を利用してインドで車の免許を取っていた。
 
 
インドへ4ヶ月以上滞在する事で免許を取る資格がもらえるらしい。
 
 
更にそれを国際免許に切り替えて、日本でも運転することが出来るとか出来ないとか。
 
 
 
 
 
 
彼の旅人という枠組みを大幅に超えた行動の仕方は、僕の中にある旅人としての枠組みを揺るがすことに成功した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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