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放浪記016

抑圧された怒りが爆発する高校時代の話4(放浪記016)

自由へのステップ

 
 
 
犯罪を犯してでも、乞食になってでも暮らして行くことができると言う妄想は、僕に想像以上の力を与えた。
 
 
 
僕は、この考えに取り込まれていき、色々な犯罪のアイデアを膨らませた。
 
 
 
今になって思うと、厨二病的な幼稚で現実味のない妄想だが、怖気付いて縮こまっていた僕の心を鼓舞するにはそれで十分だった。
 
 
 
この妄想のお陰で、エホバの証人をやめると言う方向に足を進めることが出来た。
 
 
 
僕にとって、自由とは何よりも欲しているものであり、その為に乞食になるのなら、それも受け入れようと決意していた。
 
 
 
だが僕にとって、母に対してエホバの証人を辞めたいと言うことは、世界一恐ろしいことで、まさか自分にそんな勇気があるとは想像もできない。
 
 
 
このことは母にとっては、子供が親に反抗していると言うような単純な話ではなく、”神の真理の道を歩み続けていたけれど、地上の楽園での永遠の命を捨てて、悪魔の欲の道を歩き、自殺することにします”と言うようなとんでもない問題発言だ。
 
 
 
長年、エホバの証人の教えによる愛の鞭で教育されて来た僕は、親に反抗することに対して反射的な拒絶反応を示していた。
 
 
 
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だが、ここを乗り越えなければ、暗闇の人生から抜け出すことが出来ず、一生監獄暮らしが続く。
 
このまま年老いて行くことだけは、何としてでも避けたかった。
 
 
 
何か方法は無いかと考え抜いた末に、手紙を書くことにした。
 
 
 
それまで親に反抗したこともなく、人に対して本音で話すようなことをしたことの無い僕には、手紙だけが唯一の伝達手段だった。
 
 
 
 
 
 

決意の手紙

 
 
 
手紙を完成させるのに、数日かかったと思う。
 
タブー中のタブーのメッセージを何とかして伝えたい、そして絶対にエホバの証人を辞めてやる。
 
 
 
僕は練りに練って、文章を考え出した。
 
 
 
今となっては、細かい部分までは覚えていないが、伝えたのはこう言うこと。
 
 
 
”今まで母の言う通りに生きて来て、決められたレールの上を走る貨物列車の貨物のような気持ちだった。
 
その列車の行き先は、僕が望むものではなく、引っ張られるだけの生き方は僕の望むものでは無い。
 
自分の行きたい方向を自分で決めて、自分の足で歩んで行きたい。”
 
 
 
実際には、もっと長々としたものだったが、だいたいこんな感じ。
 
 
 
この手紙を木曜日の夕方、エホバの証人の集会に行く前に手渡した。
 
手紙は前から準備していたが、渡しきれなかったので、本当に本当に集会に行きたく無いと言う限界の段階で実行した。
 
 
 
それを読んだ母は、その日は「とりあえず家に居ろ」と言い集会に向かった。
 
その日の夜は、何の会話もせずに就寝した。
 
 
 
 
 
 

呪縛からの解放

 
 
 
その後、数日経って、僕の参加していたエホバの証人の会衆の長老(地域のトップ)と面接をすることになった。
 
母は、僕が心変わりすることを期待していたと思う。
 
 
 
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僕はここで生まれて初めて、エホバの証人を続けたく無いと言う本音を言葉に出して伝えた。
 
 
 
晴れて公式に、エホバの証人から脱退することができた。
 
 
 
人生で初めての自分の意思での行動。
 
 
 
最も恐ろしいものに向き合い、自分の行動によって未来の人生を変えた。
 
僕は恐怖に向き合うと言うことを学び、どれだけ酷いことがこの先の人生に起ころうとも、絶対に今以上悪くなることはないと言う自信を手に入れた。
 
 
ちなみに、当時から現在に至るまで、この時以上の恐怖と勇気を経験したことはない。
 
 
このイベントは僕にとっては、20年以上の世界放浪よりも大きな大イベントだった。
 
 
 
 
高校2年の夏休みが終わる直前、僕は初めて人生のスタート地点に立った。
 
 
 
小学校に入って以来、下向き続けて来た僕の人生が初めて上向き始めた瞬間だ。
 
 
 
12年もの間、僕を抑圧し続けて来た蓋はついに外れ、自分の意思という自由な流れが溢れ始める。
 
 
 
全く望んでいない人生のレールを、崩壊させるプロセス。
 
 
 
この崩壊のプロセスは、まだしばらく続くことになる。
 
 
 
 
 
つづく。。。
 

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