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日本へ帰国する話14(自叙伝170)

 

とび職の日々

 

僕は週6日でとび職の仕事をし、貯金し続けた。

 

仕事では50キロの鉄の塊を担いで階段を上り下りする様になり、二十歳の若い身体は過酷な肉体労働で日々成長していた。

体重も10キロほど増えていたと思う。

 

元々背が高く痩せ細ったマッチ棒みたいな体格だったものが、ムキムキで背が高く巨人のような体格に変わっていった。

変わったのは体格や筋肉だけではなく、身体は柔軟でより素早く正確に動けるようになり、持久力もはるかに増していた。

 

どれだけ過酷に働いても大して疲れることはなく、一晩眠れば次の日には完全に回復していた。

それどころか、睡眠時間が少なくても疲れる事もなく、それまでは9時間ほど眠っていたものが、たった5時間の睡眠で事足りるようになった。

 

 

カルチャーショック

 

今までに経験したことのない肉体的な強さは画期的な経験だった。

小学校に入った時からつい最近まで信じ込んでいた、自分は体が弱く病気がちで、運動神経が悪く、肉体的に劣っていると言う思い込みはなんだったんだろうかと思った。

 

その思い込みには、実際に小学校の体育で運動が上手くできなかったと言う理由があり、その経験を自分の思い込みで強化して来ていたのだが、その思い込みはたった数ヶ月の運動でいとも簡単に変わってしまった。

 

元ヤンキーのとびの先輩が言うには「今のお前なら、街で見かける誰と喧嘩しても負ける事は無い」とお墨付きをいただいた。

 

学生時代は常に弱い立場で、無意識のうちに周りを伺いながら生きているようなところが有ったかも知れないが、今ではそんな事は微塵も存在しない。

街を歩く殆どの人よりも自分の方が圧倒的に強いと言う感覚を持つ事は大きなカルチャーショックだった。

 

中国とインドを旅して荒波をくぐり抜けた自信と肉体的に強靭と言う自信が合わさって、自身の状態は非常に調子が良かった。

 

 

閉塞感

 

だが自分が絶好調だと言う反面、日本の社会の枠組みの中で生きると言う堅苦しさに悶え苦しんでいた。

その苦しみは日を追うごとに強くなって行き、生殺しのような窮屈な苦しさを感じていた。

 

精神的に調子が良く、肉体的にも強く健康で、お金も貯まっていき、家族やガールフレンドとの関係も良好と良いことづくめだったが、僕は今までに経験したことの無いような閉塞感に苛まれていた。

 

魂の部分が自由を求めて叫んでいた。

 

僕は自分が日本に滞在することの出来る限界が近づいていることを理解し、インドへ戻る飛行機のチケットをとった。

 

僕の魂がインドへの旅を必要としていたのだ。

 

 

 
 
 

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