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祖父の死の話2(放浪記491)

 

叔父の患難

 

叔父は借金取りのヤクザから追われる身となり、近畿各地を逃げ回っていた。

母の家にも借金取りからの電話がかかってきていたようだ。

 

昔の奥さんともしばらく前に離婚しており、頼れる友人などもいなかったようだ。

逃げ回り続けた末に、どこにも行くところがなくなり、母の姉とその旦那の家へと居候住まいをすることになる。

 

そこでの居候住まいは1年ほど続いていたが、まともに働くこともなく、ただひたすら食っちゃ寝の暮らしを続けていた。

そんな居候が1年も居続ければ、母の姉にもその旦那にも限界が来る。

 

些細なきっかけで大喧嘩になり、叔父はどこにも行くところが無い状態で、家を追い出されてしまう。

 

ここで、唯一血の繋がった姉妹たちとの縁も切れてしまうことになる。

 

 

最後の選択

 

叔父は大阪の街中で、身分を隠してスーパーで働きながら一人暮らしをし、借金取りから逃げ隠れていたらしい。

 

だが、安定した逃げ場もなければ希望もなく、ただ孤独に老い行く生活に嫌気がさして、自殺することを選んだようだ。

 

彼は全ての荷物を綺麗に処分し、唯一の財産である車に乗って山へと向かった。

そこは、僕がまだ小学生の頃に家族親戚でピクニックへと出かけていた場所だった。

 

僕は小学生、姉は中学生で、家族親戚が仲良くお弁当を食べていた古き良き思い出の場所だ。

それは、僕にとってもいい思い出だが、叔父にとっても良い思い出であったようだ。

 

私の最後の瞬間は、唯一の家族とのつながりを感じながら、あの世へと行きたかったのだろう。

 

 

警察の鑑定

 

叔父は車のナンバープレートを捨てて、誰の車なのか分からない状態にした上で、全身にガソリンを浴びて火をつけた。

 

母曰く、叔父は深い後悔の末に自分自身の前存在を完全に消去したかったのではないかという。

 

燃え残った車と叔父の焼け焦げた体が発見されたのは、何ヶ月も前の話だ。

そこには身柄を指し示すものは何もなかったので、警察は身柄を特定できずにいた。

 

最後に鍵になったのは、虫歯の治療跡だった。

警察は、虫歯の痕跡を頼りに調査を続けた末に、叔父の身柄を探り当てたようだ。

 

他殺の可能性もあったので懸命に調査したらしい。

日本の警察の底力を思い知らされる。

 

かくして叔父の訃報が母たちに届いたというわけだ。

 

 
 
 

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